平宣時朝臣、老いの後、昔語りに、「最明寺入道、ある宵の間に呼ばるることありしに、『やがて』と申しながら、直垂のなくてとかくせしほどに、また使ひ来たりて、『直垂などの候はぬにや。夜なれば異様なりとも、とく』とありしかば、Continue reading… 徒然草215)平宣時朝臣
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徒然草216)最明寺入道
最明寺入道、鶴岡の社参の次に、足利左馬入道のもとへ、まづ使を遣して、立ち入られたりけるに、あるじまうけせられたりける様、一献に打ち鮑、二献に海老、三献にかいもちひにて止みぬ。その座には、亭主夫婦、隆辨僧正、主方の人にてContinue reading… 徒然草216)最明寺入道
徒然草217)ある大福長者のいはく
ある大福長者のいはく、「人はよろづをさしおきて、ひたぶるに徳をつくべきなり。貧しくては生けるかひなし。富めるのみを人とす。徳をつかむと思はば、すべからくまづその心づかひを修行すべし。その心といふは、他の事にあらず。人間Continue reading… 徒然草217)ある大福長者のいはく
徒然草218)狐は人に食ひつくものなり
狐は人に食ひつくものなり。堀川殿にて、舎人が寝たる足を狐に食はる。仁和寺にて、夜、本寺の前を通る下法師に狐三つ飛びかかりて食ひつきければ、刀を抜きてこれを防ぐ間、狐二匹を突く。一つは突き殺しぬ。二つは逃げぬ。法師は、あContinue reading… 徒然草218)狐は人に食ひつくものなり
徒然草219)四条黄門命ぜられていはく
四条黄門命ぜられていはく、「龍秋は、道にとりてはやむごとなき者なり。先日来りていはく、『短慮の至り、極めて荒涼の事なれども、横笛の五の穴は、いささかいぶかしき所の侍るかと、ひそかにこれを存ず。その故は、干の穴は平調、五Continue reading… 徒然草219)四条黄門命ぜられていはく
徒然草220)何事も、辺土はいやしく
「何事も、辺土はいやしく、かたくななれども、天王寺の舞楽のみ都に恥ぢず」といふ。天王寺の伶人の申し侍りしは、「当寺の楽は、よく図を調べ合はせて、ものの音のめでたく調り侍る事、外よりもすぐれたり。故は、太子の御時の図、今Continue reading… 徒然草220)何事も、辺土はいやしく
徒然草221)建治、弘安のころ
「建治、弘安のころは、祭りの日の放免の付け物に、異様なる紺の布四五反にて馬を作りて、尾、髪にはとうじみをして、蜘蛛の網描きたる水干に付けて、歌の心など言ひて渡りし事、常に見及び侍りしなども、興ありてしたる心地にてこそ侍Continue reading… 徒然草221)建治、弘安のころ
徒然草222)竹谷乗願房
竹谷乗願房、東二条院へ参られたりけるに、「亡者の追善には、何事か勝利多き」と尋ねさせ給ひければ、「光明真言、宝篋印陀羅尼」と申されたりけるを、弟子ども、「いかにかくは申し給ひけるぞ。念仏に勝る事候ふまじとは、など申し給Continue reading… 徒然草222)竹谷乗願房
徒然草223)鶴の大臣殿は
鶴の大臣殿は、童名、たづ君なり。鶴を飼ひ給ひける故にと申すは、僻事なり。 ← 前章へ戻る 『徒然草』 次章へ進む → 「現代日本語訳」 「文法解説」 [解題] ★自分の「ツィッター」アカウント上で、この『徒然草』のContinue reading… 徒然草223)鶴の大臣殿は
徒然草224)陰陽師有宗入道
陰陽師有宗入道、鎌倉より上りて、尋ねまうで来りしが、まづさし入りて、「この庭のいたづらに広きこと、あさましく、あるべからぬ事なり。道を知る者は、植うる事を努む。細道一つ残して、皆畠に作り給へ」と諌め侍りき。 まことにContinue reading… 徒然草224)陰陽師有宗入道
徒然草225)多久助が申しけるは
多久助が申しけるは、通憲入道、舞の手の中に、興ある事どもを撰びて、磯の禅師といひける女に教へて舞はせけり。白き水干に、鞘巻を差させ、烏帽子を引き入れたりければ、男舞とぞ言ひける。禅師が娘、静と言ひける、この芸を継げり。Continue reading… 徒然草225)多久助が申しけるは
徒然草226)後鳥羽院の御時、信濃の前司行長
後鳥羽院の御時、信濃の前司行長、稽古のほまれありけるが、楽府の御論議の番に召されて、七徳の舞を二つ忘れたりければ、五徳の冠者と異名をつきにけるを、心うきことにして、学問を捨てて遁世したりけるを、慈鎮和尚、一芸ある者をばContinue reading… 徒然草226)後鳥羽院の御時、信濃の前司行長
徒然草227)六時礼讃は
六時礼讃は、法然上人の弟子、安楽といひける僧、経文を集めて作りて、つとめにしけり。その後、太秦善観房といふ僧、節博士を定めて声明になせり。一念の念仏の最初なり。後嵯峨院の御代より始まれり。法事讃も同じく善観房始めたるなContinue reading… 徒然草227)六時礼讃は
徒然草228)千本の釈迦念仏は
千本の釈迦念仏は、文永のころ、如輪上人、これを始められけり。 ← 前章へ戻る 『徒然草』 次章へ進む → 「現代日本語訳」 「文法解説」 [解題] ★自分の「ツィッター」アカウント上で、この『徒然草』の章を紹介してContinue reading… 徒然草228)千本の釈迦念仏は
徒然草229)よき細工は
よき細工は、少しにぶき刀をつかふといふ。妙観が刀はいたくたたず。 ← 前章へ戻る 『徒然草』 次章へ進む → 「現代日本語訳」 「文法解説」 [解題] ★自分の「ツィッター」アカウント上で、この『徒然草』の章を紹介Continue reading… 徒然草229)よき細工は
徒然草230)五条内裏には、妖物ありけり
五条内裏には、妖物ありけり。藤大納言殿語られ侍りしは、殿上人ども、黒戸にて碁を打ちけるに、御簾をかかげて見るものあり。「誰そ」と見向きたれば、狐、人のやうについゐて、さし覗きたるを、「あれ狐よ」ととよまれて、惑ひ逃げにContinue reading… 徒然草230)五条内裏には、妖物ありけり
徒然草231)園の別当入道は
『「園の別当入道はさうなき庖丁者なり。ある人のもとにて、いみじき鯉をいだしたりければ、みな人、別当入道の庖丁を見ばやと思へども、たやすくうちいでむもいかがとためらひけるを、別当入道さる人にて、『このほど百日の鯉を切り侍Continue reading… 徒然草231)園の別当入道は
徒然草232)すべて人は無智、無能なるべきものなり
すべて、人は、無智、無能なるべきものなり。ある人の子の、身ざまなど悪しからぬが、父の前にて、人ともの言ふとて、史書の文を引きたりし、賢しくは聞こえしかども、尊者の前にてはさらずとも覚えしなり。 また、ある人のもとにてContinue reading… 徒然草232)すべて人は無智、無能なるべきものなり
徒然草233)よろづの咎あらじと思はば
よろづの咎あらじと思はば、何事にもまことありて、人を分かずうやうやしく、ことば少なからむにはしかじ。男女老少みなさる人こそよけれども、ことに若くかたちよき人の、言うるはしきは、忘れがたく思ひつかるるものなり。 よろづContinue reading… 徒然草233)よろづの咎あらじと思はば
徒然草234)人の物を問ひたるに
人の物を問ひたるに、知らずしもあらじ、ありのままに言はむはをこがましとにや、心まどはすやうに返り事したる、よからぬことなり。知りたることも、なほさだかにと思ひてや問ふらむ。また、まことに知らぬ人もなどかなからむ。うららContinue reading… 徒然草234)人の物を問ひたるに
徒然草235)主ある家には
主ある家には、すずろなる人、心のままに入り来ることなし。あるじなき所には、道行き人みだりにたち入り、狐、梟やうのものも、人げにせかれねば、所得顔に入り住み、こだまなどいふけしからぬ形もあらはるるものなり。また、鏡には色Continue reading… 徒然草235)主ある家には
徒然草236)丹波に出雲といふ所あり
丹波に出雲といふ所あり。大社をうつして、めでたくつくれり。しだのなにがしとかやしる所なれば、秋のころ、聖海上人、そのほかも、人あまた誘ひて、「いざ給へ、出雲拝みに。かいもちひ召させむ」とて具しもていきたるに、おのおの拝Continue reading… 徒然草236)丹波に出雲といふ所あり
徒然草237)柳筥に据うる物は
柳筥に据うる物は、縦様、横様、物によるべきにや。「巻物などは、縦様に置きて、木の間より紙ひねりを通して、結ひ付く。硯も、縦様に置きたる、筆転ばず、よし」と、三条右大臣殿仰せられき。 勘解由小路の家の能書の人々は、仮にContinue reading… 徒然草237)柳筥に据うる物は
徒然草238)御随身近友が自讃とて
御随身近友が自讃とて、七箇条書き止めたる事あり。皆、馬芸、させることなき事どもなり。その例を思ひて、自讃の事七つあり。 一、人あまた連れて花見ありきしに、最勝光院の辺にて、男の馬を走らしむるを見て、「今一度馬を馳するContinue reading… 徒然草238)御随身近友が自讃とて
徒然草239)八月十五日、九月十三日は
八月十五日、九月十三日は、婁宿なり。この宿、清明なる故に、月をもてあそぶに良夜とす。 ← 前章へ戻る 『徒然草』 次章へ進む → 「現代日本語訳」 「文法解説」 [解題] ★自分の「ツィッター」アカウント上で、このContinue reading… 徒然草239)八月十五日、九月十三日は
徒然草240)しのぶの浦の蜑の見るめも
しのぶの浦の蜑の見るめも所せく、くらぶの山も守る人繁からむに、わりなく通はむ心の色こそ、浅からず、あはれと思ふ節々の忘れ難き事も多からめ、親はらから許して、ひたぶるに迎へ据ゑたらむ、いとまばゆかりぬべし。 世にありわContinue reading… 徒然草240)しのぶの浦の蜑の見るめも
徒然草241)望月のまどかなる事は
望月のまどかなる事は、暫くも住せず、やがて欠けぬ。心止めぬ人は、一夜のうちにさまで変はるさまも見えぬにやあらむ。病の重るも、住する隙なくして、死期すでに近し。されども、未だ病急ならず、死におもむかざるほどは、常住平生のContinue reading… 徒然草241)望月のまどかなる事は
徒然草242)とこしなへに違順に使はるる事は
とこしなへに違順に使はるる事は、ひとへに苦楽のためなり。楽といふは、好み愛する事なり。これを求むること、止む時なし。楽欲する所、一つには名なり。名に二種あり。行跡と才芸との誉れなり。二つには色欲、三つには味はひなり。よContinue reading… 徒然草242)とこしなへに違順に使はるる事は
徒然草243)八つになりし年
八つになりし年、父に問うていはく、「仏はいかなるものにか候ふらむ」といふ。父がいはく、「仏には人のなりたるなり」と。また問ふ、「人はなにとして仏にはなり候ふやらむ」と。父また、「仏の教へによりてなるなり」と答ふ。また問Continue reading… 徒然草243)八つになりし年