宇治拾遺物語(巻一 一)001道命阿闍梨和泉式部の許において読経し五条の道祖神聴聞の事

 今は昔、道命阿闍梨とて、傅殿の子に色に耽りたる僧ありけり。和泉式部に通ひけり。経をめでたく読みけり。それが和泉式部がり行きて臥したりけるに、目覚めて経を心すまして読みけるほどに、八巻読み果てて、暁にまどろまんとするほどContinue reading… 宇治拾遺物語(巻一 一)001道命阿闍梨和泉式部の許において読経し五条の道祖神聴聞の事

宇治拾遺物語(巻一 二)002丹波国篠村平茸生ふる事

 これも今は昔、丹波国篠村といふ所に、年ごろ、平茸やる方もなく多かりけり。里村の者これを取りて、人にも心ざし、また我も食ひなどして年ごろ過ぐるほどに、その里にとりてむねとある者の夢に、頭をつかみなる法師どもの二三十人ばかContinue reading… 宇治拾遺物語(巻一 二)002丹波国篠村平茸生ふる事

宇治拾遺物語(巻一 三)003鬼に瘤取らるる事

 これも今は昔、右の顔に大きなる瘤ある翁ありけり。大柑子の程なり。人に交じるに及ばねば、薪をとりて世を過ぐるほどに、山へ行きぬ。雨風はしたなくて、帰るにことよわりて、山の中に心にもあらず泊まりぬ。また木こりもなかりけり。Continue reading… 宇治拾遺物語(巻一 三)003鬼に瘤取らるる事

宇治拾遺物語(巻一 五)005随求陀羅尼額に籠むる法師の事

 これも今は昔、人のもとに、ゆゆしくことごとしく斧を負ひ、法螺貝腰につけ、錫杖つきなどしたる山伏の、ことごとしげなるが入り来て、侍の立蔀の内の小庭に立ちけるを、侍、「あれはいかなる御坊ぞ」と問ひければ、「これは日ごろ白山Continue reading… 宇治拾遺物語(巻一 五)005随求陀羅尼額に籠むる法師の事

宇治拾遺物語(巻一 六)006中納言師時法師の玉茎検知の事

 これも今は昔、中納言法師といふ人おはしけり。その御もとに、ことの外に色黒き墨染の衣の短きに、不動袈裟といふ袈裟掛けて、木攣子の念珠の大きなる繰りさげたる聖法師、入り来て立てり。中納言、「あれは何する僧ぞ」と尋ねらるるにContinue reading… 宇治拾遺物語(巻一 六)006中納言師時法師の玉茎検知の事

宇治拾遺物語(巻一 七)007龍門の聖鹿にかはらんと欲する事

 大和国に龍門といふ所に聖ありけり。住みける所を名にて龍門の聖とぞ言ひける。その聖の親しく知りたりける男の、明け暮れ鹿を殺しけるに、照射といふ事をしけるころ、いみじう暗かりける夜、照射に出でにけり。  鹿を求め歩くほどにContinue reading… 宇治拾遺物語(巻一 七)007龍門の聖鹿にかはらんと欲する事

宇治拾遺物語(巻一 八)008易の占ひして金取り出す事

 旅人の宿求めけるに、大きやかなる家の、あばれたるがありけるに、よりて、「ここに宿し給ひてんや」と言へば、女声にて「よき事、宿り給へ」と言へば、皆おりゐにけり。屋、大きなれども、人のありげもなし。ただ女一人ぞあるけはひしContinue reading… 宇治拾遺物語(巻一 八)008易の占ひして金取り出す事

宇治拾遺物語(巻一 九)009宇治殿倒れさせ給ひて実相房僧正験者に召さるる事

 これも今は昔、高陽院造らるる間、宇治殿御騎馬にて渡らせ給ふ間、倒れさせ給ひて心地違はせ給ふ。心誉僧正に祈られんとて召しに遣はすほどに、いまだ参らざる先に、女房の局なる女に物憑きて申していはく、「別の事にあらず。きと目見Continue reading… 宇治拾遺物語(巻一 九)009宇治殿倒れさせ給ひて実相房僧正験者に召さるる事

宇治拾遺物語(巻一 十)010秦兼久通俊卿のもとに向かひて悪口の事

 今は昔、治部卿通俊卿、後拾遺を撰ばれける時、秦兼久、行き向かひて、おのづから歌などや入ると思ひて、うかがひけるに、治部卿いで会ひて、物語して、「いかなる歌かよみたる」と言はれければ、「はかばかしき歌候はず。後三条院かくContinue reading… 宇治拾遺物語(巻一 十)010秦兼久通俊卿のもとに向かひて悪口の事

宇治拾遺物語(巻一 十一)011源大納言雅俊一生不犯の鐘打たせたる事

 これも今は昔、京極の源大納言雅俊といふ人おはしけり。仏事をせられけるに、仏前にて僧に鐘を打たせて、一生不犯なるを選びて講を行はれけるに、ある僧の礼盤上りて、少し顔気色違ひたるやうになりて、撞木を取りて振りまわして打ちもContinue reading… 宇治拾遺物語(巻一 十一)011源大納言雅俊一生不犯の鐘打たせたる事

宇治拾遺物語(巻一 十二)012児の掻餅するに空寝したる事

 これも今は昔、比叡の山に児ありけり。僧たち宵のつれづれに、「いざ掻餅せん」と言ひけるを、この児心寄せに聞きけり。「さりとて、し出さんを待ちて寝ざらんもわろかりなん」と思ひて、片方にて出で来るを待ちけるに、すでにし出したContinue reading… 宇治拾遺物語(巻一 十二)012児の掻餅するに空寝したる事

宇治拾遺物語(巻一 十三)013田舎の児桜の散るを見て泣く事

 これも今は昔、田舎の児比叡の山へ登りたりけるが、桜のめでたく咲きたりけるに、風のはげしく吹きけるを見て、この児さめざめと泣きけるを見て、僧のやはら寄りて、「などかうは泣かせ給ふぞ。この花の散るを惜しう覚えさせ給ふか。桜Continue reading… 宇治拾遺物語(巻一 十三)013田舎の児桜の散るを見て泣く事

宇治拾遺物語(巻一 十四)014小藤太聟におどされたる事

 これも今は昔、源大納言定房と言ひける人のもとに、小藤太といふ侍ありけり。やがて女房にあひ具してぞありける。むすめも女房にてつかはれけり。この小藤太は殿の沙汰をしければ、三とほり四とほりに居広げてぞありける。この女の女房Continue reading… 宇治拾遺物語(巻一 十四)014小藤太聟におどされたる事

宇治拾遺物語(巻一 十五)015大童子鮭盗みたる事

 これも今は昔、越後国より鮭を馬に負ほせて、廿駄ばかり粟田口より京へ追ひ入れけり。それに粟田口の鍛冶がゐたるほどに、頂禿げたる大童子のまみしぐれて物むつかしう重らかにも見えぬが、この鮭の馬の中に走り入りにけり。道は狭くてContinue reading… 宇治拾遺物語(巻一 十五)015大童子鮭盗みたる事

宇治拾遺物語(巻一 十六)016尼地蔵見奉る事

 今は昔、丹後国に老尼ありけり。地蔵菩薩は暁ごとに歩き給ふといふ事をほのかに聞きて、暁ごとに地蔵見奉らんとて、ひと世界を惑ひ歩くに、博打の打ちほうけてゐたるが見て、「尼君は、寒きに何わざし給ふぞ」と言へば、「地蔵菩薩の暁Continue reading… 宇治拾遺物語(巻一 十六)016尼地蔵見奉る事

宇治拾遺物語(巻一 十七)017修行者百鬼夜行にあふ事

 今は昔、修行者のありけるが、津の国まで行きたりけるに、日暮れて、竜泉寺とて大きなる寺の古りたるが人もなきありけり。これは人宿らぬ所といへども、そのあたりにまた宿るべき所なかりければ、いかがせんと思ひて、笈打ちおろして内Continue reading… 宇治拾遺物語(巻一 十七)017修行者百鬼夜行にあふ事

宇治拾遺物語(巻二 二)020静観僧正雨を祈る法験の事

 今は昔、延喜の御時、旱魃したりけり。六十人の貴僧を召して、大般若経読ましめ給ひけるに、僧ども、黒煙を立てて、験現さんと祈りけれども、いたくのみ晴れまさりて、日強く照りければ、帝を始めて、大臣、公卿、百姓人民、この一事よContinue reading… 宇治拾遺物語(巻二 二)020静観僧正雨を祈る法験の事

宇治拾遺物語(巻二 三)021同僧正大嶽の岩祈り失ふ事

 今は昔、静観僧正は西搭の千手院といふ所に住み給へり。その所は、南向きにて大嶽をまもる所にてありけり。大嶽の乾の方のそひに大きなる巌あり。その岩の有様、竜の口をあきたるに似たりけり。その岩の筋に向かひて住みける僧ども、命Continue reading… 宇治拾遺物語(巻二 三)021同僧正大嶽の岩祈り失ふ事

宇治拾遺物語(巻二 六)024厚行死人を家より出す事

 昔、右近将監下野厚行といふ者ありけり。競馬によく乗りけり。帝王より始めまゐらせて、おぼえ殊にすぐれたり。朱雀院の御時より村上帝の御時などは、盛りにいみじき舎人にて、人も許し思ひけり。年高くなりて西京に住みけり。  隣なContinue reading… 宇治拾遺物語(巻二 六)024厚行死人を家より出す事

宇治拾遺物語(巻二 八)026晴明蔵人少将を封ずる事

 昔、晴明、陣に参りたりけるに、前はなやかに追はせて、殿上人の参りけるを見れば、蔵人少将とて、まだ若くはなやかなる人の、みめまことに清げにて、車より降りて内に参りたりけるほどに、この少将の上に、烏の飛びて通りけるが、穢土Continue reading… 宇治拾遺物語(巻二 八)026晴明蔵人少将を封ずる事

宇治拾遺物語(巻二 九)027季通事に逢はむと欲する事

 昔、駿河前司橘季通といふ者ありき。それが若かりける時、さるべき所なりける女房を忍びて行き通ひけるほどに、そこにありける侍ども、「生六位の、家人にてあらぬが、宵暁にこの殿へ出で入る事わびし。これたて籠めて勘ぜん」といふ事Continue reading… 宇治拾遺物語(巻二 九)027季通事に逢はむと欲する事

宇治拾遺物語(巻二 十)028袴垂保昌に合ふ事

 昔、袴垂とていみじき盗人の大将軍ありけり。十月ばかりに、衣の用ありければ、衣少しまうけんとて、さるべき所々窺ひ歩きけるに、夜中ばかりに、人皆しづまり果てて後、月の朧なるに、衣あまた着たりけるぬしの、指貫の稜挟みて、絹のContinue reading… 宇治拾遺物語(巻二 十)028袴垂保昌に合ふ事

宇治拾遺物語(巻二 十一)029明衡殃に合はんと欲する事

 昔、博士にて、大学頭明衡といふ人ありき。若かりける時、さるべき所に宮仕へける女房を語らひて、その所に入り臥さんこと、便なかりければ、そのかたはらにありける下種の家を借りて、「女房語らひ出して、臥さん」と言ひければ、男あContinue reading… 宇治拾遺物語(巻二 十一)029明衡殃に合はんと欲する事