百一001解題)秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露に濡れつつ
秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露に濡れつつ 『後撰集』秋中・三〇二(天智天皇:てんぢてんわう)(男性) 解題 「天智天皇」作となっているが、「秋田刈る仮庵を作りわが居れば衣手寒く露ぞ置きにける」『万葉集』巻十 [...]
百一002解題)春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山
春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山 『新古今集』夏・一七五(持統天皇:ぢとうてんわう)(女性) 解題 『小倉百人一首』の生みの親の藤原定家も撰者の一人だった『新古今和歌集』(1210~1216年頃成立)に「 [...]
百一003解題)あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む 『拾遺集』恋三・七七八(柿本人麿呂:かきのもとのひとまろ)(男性) 解題 後代「歌聖」と称されることになる万葉歌人柿本人麻呂の作(『万葉集』巻十一・二八〇二で [...]
百一004解題)田子の裏にうちいでて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ
田子の裏にうちいでて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ 『新古今集』冬・六七五(山部赤人:やまべのあかひと)(男性) 解題 元歌は『万葉集』(巻三・三一八)「田子の浦ゆうち出でて見れば真白にそ不尽の高嶺に雪は降りける [...]
百一005解題)奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき 『古今集』秋上・二一五(猿丸大夫:さるまるだいふ)(男性) 解題 「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿」の声を聞くためには、この詩の詠み手自身もまた「奥山に紅葉踏み分け」足を踏み入 [...]
百一006解題)かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞふけにける
かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞふけにける 『新古今集』冬・六二〇(中納言家持:ちゅうなごんやかもち)(男性) 解題 この歌の「かささぎのわたせるはし」とは、年に一度、7月7日に天の川をまたいでの逢い引きを [...]
百一007解題)天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山にいでし月かも
天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山にいでし月かも 『古今集』羈旅・四〇六(安倍仲麿:あべのなかまろ)(男性) 解題 詠み手の置かれた状況を知らぬままでは味わいようのない歌というものがありますが、これもその一つ。奈良時 [...]
百一008解題)わが庵は都の辰巳しかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり
わが庵は都の辰巳しかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり 『古今集』雑下・九八三(喜撰法師:きせんほふし)(男性) 解題 「しかぞすむ」に「然ぞ住む(人はあれこれ言うけれど、ほーれ、こうして私は生きています)」/「鹿ぞ住む( [...]
百一009解題)花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに
花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに 『古今集』春下・一一三(小野小町:をののこまち)(女性) 解題 「いたづらに」・「ふる」・「ながめ」を巡り展開する錯綜(共通構造)の妙が、「小野小町」という伝 [...]
百一010解題)これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関
これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関 『後撰集』雑一・一〇八九(蝉丸:せみまる)(男性) 解題 この作品は、日本で第二番目の勅撰和歌集『後撰集』に収録されたもの。 初の勅撰和歌集『古今和歌集』(905 [...]
百一011解題)わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣り舟
わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣り舟 『古今集』羈旅・四〇七(参議篁:さんぎたかむら)(男性) 解題 冒頭の「わたのはら」は「大海原」の意味。現代にも「海洋」の文語版として「わだつみ」という語が残る [...]
百一012解題)天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ 『古今集』雑上・八七二(僧正遍昭:そうじゃうへんぜう)(男性) 解題 この歌は、仁明天皇(第54代)の治世、宮中の豊明節会で披露された「五節の舞姫」の踊りを賛美したも [...]
百一013解題)筑波嶺の峰より落つるみなの河恋ぞ積もりて淵となりぬる
筑波嶺の峰より落つるみなの河恋ぞ積もりて淵となりぬる 『古今集』恋三・七七六(陽成院:やうぜいゐん)(男性) 解題 どういう訳か知らないが、この歌に「序詞」が含まれている、と指摘する古文業界人(百人一首解説書・歌学書・ [...]
百一014解題)陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに
陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに 『古今集』恋四・七二四(河原左大臣:かはらのさだいじん)(男性) 解題 初句・二句の「陸奥の信夫捩摺り」は、乱れ模様を特徴とする東北の信夫地方の着物の染色法で、その [...]
百一015解題)君がため春の野にいでて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ
君がため春の野にいでて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ 『古今集』春上・二一(光孝天皇:くゎうかうてんわう)(男性) 解題 殆ど技巧らしい技巧を施すこともない素直な短歌で、万葉調の天皇歌の趣さえ漂うこの平安初期の歌の作者 [...]
百一016解題)立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む
立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む 『古今集』離別・三六五(中納言行平:ちゅうなごんゆきひら)(男性) 解題 「見送りに出てくれたあなたとはここでお別れして、国司としての任国(・・・任期は四年間)の [...]
百一017解題)ちはやぶる神代も聞かず竜田川韓紅に水くくるとは
ちはやぶる神代も聞かず竜田川韓紅に水くくるとは 『古今集』秋下・二九四(在原業平朝臣:ありはらのなりひらあそん)(男性) 解題 文法構造的に、この歌では、本来冒頭にあるべきものが三句目以降へと倒置されている。意味上の語 [...]
百一018解題)住江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ
住江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ 『古今集』恋二・五五九(藤原敏行朝臣:ふぢはらのとしゆきあそん)(男性) 解題 この歌の創作動機には、次の漢詩があったようです:「燕子楼中霜月夜秋来只為一人長」『白氏文 [...]
百一019解題)難波潟みじかき葦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや
難波潟みじかき葦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや 『新古今集』恋一・一〇四九(伊勢:いせ)(女性) 解題 「難波潟みじかき葦の」までは、後続の「ふしの間」(より正確に言えば、「みじかき・・・ふしの間」)を導き出 [...]
百一020解題)わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ
わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ 『後撰集』恋五・九六〇(元良親王:もとよししんわう)(男性) 解題 この歌の詠み手は元良親王。彼の父は陽成院(第13番歌の作者)、母親は藤原連永女で、正妃の子で [...]
百一021解題)いま来むといひしばかりに長月の有り明けの月を待ちいでつるかな
いま来むといひしばかりに長月の有り明けの月を待ちいでつるかな 『古今集』恋四・六九一(素性法師:そせいほふし)(男性) 解題 古文(詩文/散文ともに)を読む時に最も苦心させられ、躓きの元ともなるのは、「見えない主語」の [...]
百一022解題)吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ
吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ 『古今集』秋下・二四九(文屋康秀:ふんやのやすひで)(男性) 解題 「あらし」という語が、「嵐」と同時に「荒らし」とも書ける点に着目した掛詞に加えて、部首的に分解し [...]
百一023解題)月見ればちぢに物こそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど
月見ればちぢに物こそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど 『古今集』秋上・一九三(大江千里:おほえのちさと)(男性) 解題 この歌の創作動機には、次の漢詩があったようです:「燕子楼中霜月夜秋来只為一人長」『白氏文集』( [...]
百一024解題)このたびは幣もとりあへずたむけ山紅葉の錦神のまにまに
このたびは幣もとりあへずたむけ山紅葉の錦神のまにまに 『古今集』羈旅・四二〇(菅家:かんけ)(男性) 解題 「このたびは」は「この旅は」と「この度は」の掛詞で、以前にも同じ旅に出たことがあることを示唆する。この時代には [...]
百一025解題)名にしおはば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな
名にしおはば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな 『後撰集』恋三・七〇〇(三条右大臣:さんじゃうのうだいじん)(男性) 解題 修辞法として「序詞」と、それを成立させるための「掛詞」と「縁語」、それに「歌枕」を含 [...]
百一026解題)小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびの行幸待たなむ
小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびの行幸待たなむ 『拾遺集』雑秋・一一二八(貞信公:ていしんこう)(男性) 解題 心を持たぬ(=無情の)存在である「紅葉」に訴えかける擬人法以外、技巧らしい技巧も一切ない歌であるが、そ [...]
百一027解題)みかの原わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ
みかの原わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ 『新古今集』恋一・九九六(中納言兼輔:ちゅうなごんかねすけ)(男性) 解題 この歌を収めた『新古今和歌集』では、作者を「藤原兼輔」、歌題を「まだ見ぬ人への恋」とし [...]
百一028解題)山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば 『古今集』冬・三一五(源宗于朝臣:みなもとのむねゆきあそん)(男性) 解題 「山里の風情で見るべきものは、何?」・・・「そうですね、人里と比べれば常に寂しいものです [...]
百一029解題)心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花
心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花 『古今集』秋下・二七七(凡河内躬恒:おほしかふちのみつね)(男性) 解題 「心あてに」は現代語で言えば「当てずっぽうに」。見当が付かない中で、とりあえずこれ、と山勘で [...]
百一030解題)有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし
有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし 『古今集』恋三・六二五(壬生忠岑:みぶのただみね)(男性) 解題 「有明の月」・・・夜のものの筈なのに明け方の空に忘れ物のように残っている月・・・和歌にしばしば詠み込 [...]
百一031解題)朝ぼらけ有り明けの月と見るまでに吉野の里に降れる白雪
朝ぼらけ有り明けの月と見るまでに吉野の里に降れる白雪 『古今集』冬・三三二(坂上是則:さかのうへのこれのり)(男性) 解題 「朝ぼらけ」は「朝+ほろ+明け」の音便短縮形で「朝がほろほろと(少しずつ)明け行く時間帯」のこ [...]
百一032解題)山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり
山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり 『古今集』秋下・三〇三(春道列樹:はるみちのつらき)(男性) 解題 古語の約束事では、「山川」と書いて「やまかは」と読めばそれは「山と川:rivers and mo [...]
百一033解題)久方の光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ
久方の光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ 『古今集』春下・八四(紀友則:きのとものり)(男性) 解題 『小倉百人一首』の人気投票をしたらベスト3入選は確実、かなり高い確率で第一位を取れる歌、そう断言できると思います [...]
百一034解題)誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに
誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに 『古今集』雑上・九〇九(藤原興風:ふぢはらのおきかぜ)(男性) 解題 冒頭部「誰をかも知る人にせむ」には、古語の常として、「主語」と「目的語」が欠落している。補って書けば [...]
百一035解題)人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける
人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける 『古今集』春上・四二(紀貫之:きのつらゆき)(男性) 解題 これは、二句切れに味がある歌。意味の上からは、第二句の結びは逆接の已然形「知らね」として不完全終止の形でそ [...]
百一036解題)夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらむ
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらむ 『古今集』夏・一六六(清原深養父:きよはらのふかやぶ)(男性) 解題 現代語訳の必要もないほどに、用語も修辞も平易な短歌・・・だけど一応訳してみる:「夏の夜は、ま [...]
百一037解題)白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける
白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける 『後撰集』秋中・三〇八(文屋朝康:ふんやのあさやす)(男性) 解題 この歌については、同じ作者(文屋朝康・・・「六歌仙」文屋康秀の息子とされるが、残された歌は少なく [...]
百一038解題)忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな
忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな 『拾遺集』恋四・八七〇(右近:うこん)(女性) 解題 {(将来、あなたに)忘れられることになる我が身であろうとは想像もせずに}{かつて、私が変わらぬ愛を誓った}/{ [...]
百一039解題)浅茅生の小野の篠原忍ぶれどあまりてなどか人の恋しき
浅茅生の小野の篠原忍ぶれどあまりてなどか人の恋しき 『後撰集』恋一・五七七(参議等:さんぎひとし)(男性) 解題 この歌は本歌取り。元の歌はこれ: 浅茅生の小野の篠原偲ぶとも人知るらめやいふ人なしに(『古今集』恋一・ [...]
百一040解題)忍ぶれど色に出にけりわが恋はものや思ふと人のとふまで
忍ぶれど色に出にけりわが恋はものや思ふと人のとふまで 『拾遺集』恋一・六二二(平兼盛:たひらのかねもり)(男性) 解題 冒頭の「しのぶ」は「偲ぶ(恋慕する)」ではなくて「忍ぶ(我慢する)」。何を我慢しているかと言えば「 [...]
百一041解題)恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか
恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか 『拾遺集』恋1・六二一(壬生忠見:みぶのただみ)(男性) 解題 『小倉百人一首』でも隣り合っている第40番歌(「忍ぶれど色に出にけりわが恋はものや思ふと人のとふ [...]
百一042解題)契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山浪こさじとは
契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山浪こさじとは 『後拾遺集』恋四・七七〇(清原元輔:きよはらのもとすけ)(男性) 解題 有名な恋歌「君をおきてあだし心をわが持たば末の松山浪も越えなむ」(『古今集』東歌・一〇九三・よ [...]
百一043解題)逢ひ見ての後の心にくらぶれば昔は物を思はざりけり
逢ひ見ての後の心にくらぶれば昔は物を思はざりけり 『拾遺集』恋二・七一〇(権中納言敦忠:ごんちゅうなごんあつただ)(男性) 解題 「逢ひ見る」とは「逢瀬(デート)をして実際に生身の相手の姿を見る」ということで、多く、単 [...]
百一044解題)逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし
逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし 『拾遺集』恋一・六七八(中納言朝忠:ちゅうなごんあさただ)(男性) 解題 (第40番歌の平兼盛vs.第41番歌の壬生忠見の対決エピソードによって)古典世界では [...]
百一045解題)あはれとも言ふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな
あはれとも言ふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな 『拾遺集』恋五・九五〇(謙徳公:けんとくこう)(男性) 解題 これまた"恋歌の『拾遺集』"の収録歌で、「詞書」には、「物言ひはべりける女の [...]
百一046解題)由良の門を渡る舟人梶緒絶えゆくへも知らぬ恋の道かな
由良の門を渡る舟人梶緒絶えゆくへも知らぬ恋の道かな 『新古今集』恋一・一〇七一(曾禰好忠:そねのよしただ)(男性) 解題 「由良の門」とは、京都北部を流れる由良川が、京都と福井の海岸線が日本海に深く入り組んで出来た若狭 [...]
百一047解題)八重葎茂れる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり
八重葎茂れる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり 『拾遺集』秋・一四〇(恵慶法師:えぎゃうほふし)(男性) 解題 この歌は、源融がかつて風流の限りを尽くして遊び暮らしたという「河原院」に、彼の曾孫の安法法師が、歌人仲 [...]
百一048解題)風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな
風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな 『詞花集』恋上・二一一(源重之:みなもとのしげゆき)(男性) 解題 この歌に関しては、これまで一般に言われてきた解釈をまず最初に掲げておき、それとは異なる筆者独自 [...]
百一049解題)御垣守衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつ物をこそ思へ
御垣守衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつ物をこそ思へ 『詞花集』恋上・二二五(大中臣能宣朝臣:おほなかとみのよしのぶあそん)(男性) 解題 『後撰集』(950年代成立)の編者「梨壺の五人」の一人として知られる大中臣能宣 [...]
百一050解題)君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな
君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな 『後拾遺集』恋二・六六九(藤原義孝:ふぢはらのよしたか)(男性) 解題 一人ぼっちの時には、大した重みを感じなかった自分の存在。誰かに出会って、その人のことを心底思 [...]
百一051解題)かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを
かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを 『後拾遺集』恋一・六一二(藤原実方朝臣:ふぢはらのさねかたあそん)(男性) 解題 「斯く=かくかくしかじか、実は~なんです」だなんて、「えやはいふべき(いぶき [...]
百一052解題)明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな
明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな 『後拾遺集』恋二・六七二(藤原道信朝臣:ふぢはらのみちのぶあそん)(男性) 解題 この歌は、主語の補足と、状況の補足ができなければ、意味の捕捉も叶わぬ歌である [...]
百一053解題)嘆きつつひとり寝る夜のあくる間はいかに久しきものとかは知る
嘆きつつひとり寝る夜のあくる間はいかに久しきものとかは知る 『拾遺集』恋四・九一二(右大将道綱母:うだいしゃうみちつなのはは)(女性) 解題 平安時代の男女関係は、悲しいほどに男性優位で、「一夫多妻」に「妻問婚」。女性 [...]
百一054解題)忘れじの行く末まではかたければ今日を限りの命ともがな
忘れじの行く末まではかたければ今日を限りの命ともがな 『新古今集』恋三・一一四九(儀同三司母:ぎどうさんしのはは)(女性) 解題 「忘れじ」は、普通に読めば「"君のことを"忘れるものか」・・・だけど [...]
百一055解題)滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ
滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ 『拾遺集』雑上・一〇三五(大納言公任:だいなごんきんたふ)(男性) 解題 「滝の音は聞こえなくなってもう久しいが、その名だけは世に流れて今なお聞こえている」・・ [...]
百一056解題)あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな
あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな 『後拾遺集』恋三・七六三(和泉式部:いづみしきぶ)(女性) 解題 「あらざらむこの世のほか」は、「世」の解釈次第で「私がもう生きていないであろうこの世の外」 [...]
百一057解題)めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬまに雲隠れにし夜半の月かな
めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬまに雲隠れにし夜半の月かな 『新古今集』雑上・一四九九(紫式部:むらさきしきぶ)(女性) 解題 「めぐり逢ひて見しや・・・実際に会ったのかしら」ともはっきりとはわからぬうちに、「雲隠れに [...]
百一058解題)有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする
有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする 『後拾遺集』恋二・七〇九(大弐三位:だいにのさんみ)(女性) 解題 「有馬山猪名の笹原風吹けば」は、続く「いでそよ」を導くためだけに置かれた「序詞」。「そよそよとそよぐ [...]
百一059解題)やすらはで寝なましものをさ夜ふけてかたぶくまでの月を見しかな
やすらはで寝なましものをさ夜ふけてかたぶくまでの月を見しかな 『後拾遺集』恋二・六八〇(赤染衛門:あかぞめゑもん)(女性) 解題 「やすらはで」は、現代人は「安らぐことなく・・・不安な状態で」と錯覚しそうですが、実際に [...]
百一060解題)大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立
大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立 『金葉集』雑上・五五〇(小式部内侍:こしきぶのないし)(女性) 解題 「大江山」に「生野」に「天橋立」と、関西方面の「歌枕」をふんだんに織り込み、「いくの」=「生野」/ [...]
百一061解題)いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな
いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな 『詞花集』春・二九(伊勢大輔:いせのたいふ)(女性) 解題 「"いにしへの"奈良の都」は、この歌の当時の首都「京都」から見た"旧都&qu [...]
百一062解題)夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ
夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ 『後拾遺集』雑二・九三九(清少納言:せいせうなごん)(女性) 解題 随筆文学『枕草子』の作者、清少納言の詠んだ歌・・・だけど、これ、とても"詩歌&quo [...]
百一063解題)今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな
今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな 『後拾遺集』恋三・七五〇(左京大夫道雅:さきゃうのだいぶみちまさ)(男性) 解題 恋の終わりで一番辛いのは、終わったことに納得が行かない終わり方。「さようなら」 [...]
百一064解題)朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木
朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木 『千載集』冬・四二〇(権中納言定頼:ごんちゅうなごんさだより)(男性) 解題 「朝ぼらけ」は「朝+ほろ+明け」。"ほろ"は「ほろ酔い加減」の& [...]
百一065解題)恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ 『後拾遺集』恋四・八一五(相模:さがみ)(女性) 解題 「恨みわび干さぬ袖」とは、薄情な人への恨みに心が沈み、絶えず流れる涙で、着物の袖が乾く暇もない、という意 [...]
百一066解題)もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし
もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし 『金葉集』雑上・五二一(前大僧正行尊:さきのだいそうじゃうぎゃうそん)(男性) 解題 詠み手「前大僧正行尊」の名前からすると、引退した偉い僧侶(・・・お坊さんに&qu [...]
百一067解題)春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ
春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ 『千載集』雑上・九六四(周防内侍:すはうのないし)(女性) 解題 ここは春の二条院。月明かりの下、宮仕えの女房たちは、物語に興じての夜更かしの末に、そろそろ眠い時 [...]
百一068解題)心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな
心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな 『後拾遺集』雑一・八六〇(三条院:さんでういん)(男性) 解題 作歌事情を知らなくても美しいのですが、事情を知ればなお切ない物語が浮かんで来る歌です。 「院」と [...]
百一069解題)嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり
嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり 『後拾遺集』秋下・三六六(能因法師:のういんほふし)(男性) 解題 三室山や竜田川の実景を詠んだものではなく、歌合せ(「永承四年内裏歌合」)の「題詠」として、想像の中の美 [...]
百一070解題)さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ
さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ 『後拾遺集』秋上・三三三(良暹法師:りゃうぜんほふし)(男性) 解題 翻訳する必要のない古歌というものが、たまにある。これなどまさにそれ。ただ、歌(というか、作 [...]
百一071解題)夕されば門田の稲葉おとづれて芦のまろやに秋風ぞ吹く
夕されば門田の稲葉おとづれて芦のまろやに秋風ぞ吹く 『金葉集』秋・一七三(大納言経信:だいなごんつねのぶ)(男性) 解題 現代の語感では「夕方が去る・・・夜になる?」と誤読しがちな「夕さる」だが、この「さる」は「人間の [...]
百一072解題)音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖の濡れもこそすれ
音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖の濡れもこそすれ 『金葉集』恋下・四六九(祐子内親王家紀伊:ゆうしないしんわうけのきい)(女性) 解題 時は、平安中期の堀河帝時代。男性がまず女性に恋歌を贈り、女性が男性に返歌を詠み [...]
百一073解題)高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ
高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ 『後拾遺集』春上・一二〇(前中納言匡房:さきのちゅうなごんまさふさ)(男性) 解題 初句の「高砂」は、具体的な地名「播磨の国の高砂」にも見えるが、その「高砂」ならば「 [...]
百一074解題)憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを
憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを 『千載集』恋二・七〇八(源俊頼朝臣:みなもとのとしよりあそん)(男性) 解題 「祈れども逢はざる恋」(神仏に願ったのに、成就しない恋愛)という発想で作られた「題 [...]
百一075解題)契りおきしさせもが露をいのちにてあはれ今年の秋もいぬめり
契りおきしさせもが露をいのちにてあはれ今年の秋もいぬめり 『千載集』雑上・一〇二六(藤原基俊:ふぢはらのもととし)(男性) 解題 平安時代の終わりを象徴するようなこの歌には、作歌事情の解説がまず最初に必要であろう。 [...]
百一076解題)わたの原漕ぎ出でてみればひさかたの雲ゐにまがふ沖つ白波
わたの原漕ぎ出でてみればひさかたの雲ゐにまがふ沖つ白波 『詞花集』雑下・三八二(前関白太政大臣法性寺入道:さきのかんぱくだいじゃうだいじんほっしゃうにふだう)(男性) 解題 「わたの原」は「果てしなく広がる大海原」。 [...]
百一077解題)瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ 『詞花集』恋上・二二九(崇徳院:すとくゐん)(男性) 解題 「瀬」とは浅瀬、即ち「水の流れの浅い部分」。この水の流れの元は「滝」ですから、そこから流れ込む「滝川」の [...]
百一078解題)淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守
淡路島通ふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守 『金葉集』冬・二七〇(源兼昌:みなもとのかねまさ)(男性) 解題 この歌の解釈の下敷きには、紫式部が『源氏物語』(1008)「須磨」の巻で、光源氏に独白の形で呟かせた次の [...]
百一079解題)秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ
秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ 『新古今集』秋上・四一三(左京大夫顕輔:さきゃうのだいぶあきすけ)(男性) 解題 叙情の影も宿さぬ叙景一辺倒の歌ながら、そのイメージ訴求力の高さで『新古今和歌集』 [...]
百一080解題)長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝は物をこそ思へ
長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝は物をこそ思へ 『千載集』恋三・八〇三(待賢門院堀河:たいけんもんゐんのほりかわ)(女性) 解題 「長からむ心」は、「今後長きに渡ってこの私を愛し続けてくれる・・・であろう(か知らねど [...]
百一081解題)ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有り明けの月ぞ残れる
ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有り明けの月ぞ残れる 『千載集』夏・一六一(後徳大寺左大臣:ごとくだいじのさだいじん)(男性) 解題 この歌は、次の歌の趣旨を踏まえての「本説取り」・・・あるいは「本歌取り」と言って [...]
百一082解題)思ひわびさても生命はあるものを憂きにたへぬは涙なりけり
思ひわびさても生命はあるものを憂きにたへぬは涙なりけり 『千載集』恋三・八一八(道因法師:だういんほふし)(男性) 解題 『千載和歌集』(1188)「恋」の部立てに入る歌であるが、「悲恋を嘆く歌」という枠組みに閉じ籠め [...]
百一083解題)世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる
世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる 『千載集』雑中・一一五一(皇太后宮大夫俊成:こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい)(男性) 解題 山奥へ分け入り、鹿の声を聞く・・・あの「伝説の猿丸大夫」に帰せられてい [...]
百一084解題)ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき
ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき 『新古今集』雑下・一八四三(藤原清輔朝臣:ふぢはらのきよすけあそん)(男性) 解題 三条天皇の第68番歌「心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月か [...]
百一085解題)夜もすがら物思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり
夜もすがら物思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり 『千載集』恋二・七六六(俊恵法師:しゅんゑほふし)(男性) 解題 「すがら」の意味は二つで、1)「・・・の間じゅうずっと」(例:「ひねもすがら」転じて「ひねも [...]
百一086解題)なげけとて月やは物を思はするかこち顔なる我が涙かな
なげけとて月やは物を思はするかこち顔なる我が涙かな 『千載集』恋五・九二九(西行法師:さいぎゃうほふし)(男性) 解題 「さぁ、悲しがるがよい」と「月が私に物思いをさせる」なんてことがあるだろうか・・・ありはしない・・ [...]
百一087解題)村雨の露もまだ干ぬ槇の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ
村雨の露もまだ干ぬ槇の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ 『新古今集』秋下・四九一(寂蓮法師:じゃくれんほふし)(男性) 解題 「村雨」とは「通り雨」、一時的に降ってはさーっと引いて行く気紛れな秋~冬の風物詩である。その時雨の [...]
百一088解題)難波江の蘆のかりねの一夜ゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき
難波江の蘆のかりねの一夜ゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき 『千載集』恋三・八〇七(皇嘉門院別当:くゎうかもんゐんのべったう)(女性) 解題 「本説取り」とまでは言えないけれど、この歌の根には、第19番歌「難波潟みじかき [...]
百一089解題)玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする 『新古今集』恋一・一〇三四(式子内親王:しょくし/しきしないしんわう)(女性) 解題 「本歌取り」とまでは言えないが、この歌の200年前の下敷きとも言うべき和 [...]
百一090解題)見せばやな雄島の海人の袖だにも濡れにぞ濡れし色はかはらず
見せばやな雄島の海人の袖だにも濡れにぞ濡れし色はかはらず 『千載集』恋四・八八六(殷富門院大輔:いんぶもんゐんのたいふ)(女性) 解題 この歌は次の歌の「本説取り」: 松島や雄島の磯に漁りせし海人の袖こそかくは濡れし [...]
百一091解題)きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣片敷きひとりかも寝む
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣片敷きひとりかも寝む 『新古今集』秋下・五一八(前太政大臣後京極摂政:さきのだいじゃうだいじんごきゃうごくせっしゃう)(男性) 解題 この歌は、その組成の大部分を古歌から取った「本歌取 [...]
百一092解題)わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし
わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし 『千載集』恋二・七六〇(二条院讃岐:にでうゐんのさぬき)(女性) 解題 この歌の主意は「我が袖は・・・人こそ知らね乾く間もなし=人は知らないけれど、私の着物の袖は( [...]
百一093解題)世の中は常にもがもな渚こぐあまの小舟の綱手かなしも
世の中は常にもがもな渚こぐあまの小舟の綱手かなしも 『新勅撰集』羈旅・五二五(鎌倉右大臣:かまくらうだいじん)(男性) 解題 「鎌倉右大臣(鎌倉にある幕府の長、源氏の棟梁にして征夷大将軍、官位は右大臣)」こと源実朝(= [...]
百一094解題)み吉野の山の秋風さ夜ふけて古里寒く衣打つなり
み吉野の山の秋風さ夜ふけて古里寒く衣打つなり 『新古今集』秋下・四八三(参議雅経:さんぎまさつね)(男性) 解題 この歌は、『古今和歌集』(905)に収録された坂上是則の次の短歌の「本歌取り」: み吉野の山の白雪つも [...]
百一095解題)おほけなく憂き世の民におほふかなわが立つ杣に墨染の袖
おほけなく憂き世の民におほふかなわが立つ杣に墨染の袖 『千載集』雑中・一一三七(前大僧正慈円:さきのだいそうじゃうじゑん)(男性) 解題 これは、詠み手の立場が解らなければ意味が判らない歌。作った人は「前大僧正慈円」。 [...]
百一096解題)花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり
花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり 『新勅撰集』雑一・一〇五二(前太政大臣入道:さきのだいじゃうだいじんにふだう)(男性) 解題 この歌を読み解く鍵は「掛詞」と「見立て」の二つである。 まずは「白い [...]
百一097解題)来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身も焦がれつつ
来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身も焦がれつつ 『新勅撰集』恋三・八四九(権中納言定家:ごんちゅうなごんていか)(男性) 解題 これは、『小倉百人一首』撰者である藤原定家自身の晩年の自讃歌で、次の『万葉集』(7 [...]
百一098解題)風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりける
風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりける 『新勅撰集』夏・一九二(従二位家隆:じゅにいいへたか)(男性) 解題 初句の「風そよぐ」は、肌に涼しい皮膚感覚をもたらすと共に、二句目の「楢」と結び付くと「楢の木 [...]
百一099解題)人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は
人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は 『続後撰集』雑中・一二〇二(後鳥羽院:ごとばゐん)(男性) 解題 「をし=惜し・愛し」と「うらめし=怨めし・恨めし」は対立する感情である。が、相互補完的感情でもあ [...]
百一100解題)百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり
百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり 『続後撰集』雑下・一二〇五(順徳院:じゅんとくいん)(男性) 解題 この歌の作者は順徳天皇(84代)。第99番歌作者である後鳥羽天皇(82代)の第三皇子。前代は第一皇 [...]
声