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『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』017
― 十七 ― 以上、天才たちの天命との付き合い方に触発・激励されての、筆者個人の心の持ち方・命数の使い方・めげない生き様ばかり、好き勝手に並べてきた独り善がりなこの文章の最後には、そんな自分に、いかにも自分らしい、他の [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』016
― 十六 ― 殴られて、打ちのめされても、問い続け、遂に見出す「不幸」のその意味・・・太宰治の人生から学べることは、言葉で書けば味気ないが、言葉に尽くし難い痛撃の数々を、生身で演じる人間には、言葉を越えた凄みが宿る。太 [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』015
― 十五 ― ウィリアム・シェイクスピアは「人生は芝居だ」と言い、織田信長は「人間五十年、下天のうちに比ぶれば、夢・幻の如くなり・・・されば、うつつの夢に命を賭けて、散って果てるも、また苦しからず」の「敦盛」哲学に殉じ [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』014
― 十四 ― 昭和二十一(1946)年 「十五年間」、「やんぬる哉」、「雀」、「苦悩の年鑑」、「チャンス」、「冬の花火」、「未帰還の友に」、「春の枯葉」、「たづねびと」、「親友交歓」、「男女同権」、「トカトントン」、「メ [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』013
― 十三 ― 太宰治と言えば「自殺未遂」というぐらいに、彼の作品を読まぬ人間でも反射的に思い浮かぶほど数多くの「死への衝動」と向き合い続けた太宰(自殺未遂全四回)だが、単独自殺を企てたのは二回だけ。その他の三度は女性と [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』012
― 十二 ― すらすらと、何の苦もなく、名文が書ける。それが天分であることを、太宰治自身がその多感な少年時代からして既にもう知らずにいた道理がない。その自覚と自負ゆえにこそ、まだ若い太宰は「選ばれた者としての恍惚」を胸 [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』011
― 十一 ― 志賀直哉・川端康成など、日本では俗に「一流作家」と称されている面々を、ここまでで既にかなり乱暴に撫で切りにしてしまったこの文章であるが、それが「天才」を相手とする性質のものである以上、これはやむを得ぬこと [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』010
― 十 ― 太宰治の人生で、恐らく最も幸福だったのは、乳母の愛に包まれて過ごしたその幼年期であろう。この女性の名は、作品ごとに幾つもの名が使い分けられていて、大事な生身の幼年期の記憶と、売文稼業の現実との間に、呪文に似 [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』009
― 九 ― 努力に依拠せぬ天衣無縫の天才的文筆能力だけが、太宰治の強みだったわけではない。芥川同様、ストーリー展開の面白さで読者を引っ張るサービス精神も、太宰作品の持ち味でもある。ただ、純然たる想像力でそれを為し遂げた [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』008
― 八 ― 太宰治もまた天才ではあったが、芥川のように早い時期から天才人気作家としての道を歩む順風には恵まれなかっただけに、天から与えられた才能をどうやって生かすべきか、そもそもその才能とは何なのか、この問題については [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』007
― 七 ― 天才ならざる「大家」がのさばる文学界という図式が、古今変わらぬ日本の伝統芸であることは、この物語の脈絡の中では、声を大にして繰り返すのがよかろう。が、現実の文壇では、他の誰かに先んじて大きな賞を取った者、よ [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』006
― 六 ― 芥川龍之介は天才である。天才の名を冠するに彼ほど相応しい文人は、日本には数えるほどしか存在しない。時代を遡れば、和歌の天才和泉式部(いずみしきぶ 978前後)と俳句の創始者松尾芭蕉(まつお・ばしょう 164 [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』005
― 五 ― 「芥川賞」を巡る文壇との確執が生じる時までに、太宰は既に(仏文科学生のくせにフランス語も学ばずろくすっぽ講義にも出なかった)東京帝国大学を(学費滞納なども加わって)やめている(最終的に中退が確定したのは昭和 [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』004
― 四 ― 人間太宰治が個人的・社会的に大いにお世話になった作家は井伏鱒二であったが、彼が作家・芸術家として憧れ目指したのは芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ 1892―1927)であった。そしてその芥川もまた紛れも [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』003
― 三 ― 男の名は「津島修司(つしま・しゅうじ)」といった。その筆名は「太宰治(だざい・おさむ)1909―1948」である。その名の由来には諸説あり、この男の天才性にかこつけるべき筋も乏しい話なので、いっそ全面的に無 [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』002
― 二 ― 自分には出来ぬことを平然と為し遂げる人間がいる――この事実に腹を立てる人間と、それをやたら賞賛する人間とは、平然にして超然たる天才にとって、いささか厄介な邪魔者である。天才が天に授けられた才能を以て仕事をす [...]
『かたりべ―太宰がいたからめげずにいられる―』001
『かたりべ』 ―太宰がいたからめげずにいられる― ――この長い長い文章を、天運に粛々と殉じつつ今は草葉の陰に眠る幾多の人々と、今生きて、自分を生かしてくれている、有り難き人々に捧ぐ ― 一 ― 人間が生涯のうちに出会う [...]
『かたりべ(太宰がいたからめげずにいられる)』目次
essay by Noto Jaugo(之人冗悟による太宰治をめぐる随想記) 目次(記事日付) 000:梗概:2011年6月13日(月) 001: 2011年6月13日(月) 002: 2011年6月20日(月) 003 [...]
「かたりべ」梗概(あらすじ)
「かたりべ」梗概(あらすじ) 生身で接した人とでなければ「出会った」ことにはならぬというなら、この物語には、何の出会いも登場しない。生きて作中を動き回る人物達の、台詞も、行動も、運命も、筆者の自分が一手に握り、生殺与奪 [...]
ろまん燈籠
ろまん燈籠 太宰治 その一 八年まえに亡くなった、あの有名な洋画の大家、入江新之助氏の遺家族は皆すこし変っているようである。いや、変調子というのではなく、案外そのような暮しかたのほうが正しいので、かえって [...]
佳日
佳日 太宰治 これは、いま、大日本帝国の自存自衛のため、内地から遠く離れて、お働きになっている人たちに対して、お留守の事は全く御安心下さい、という朗報にもなりはせぬかと思って、愚かな作者が、どもりながら物語るささやかな [...]
千代女
千代女 太宰治 女は、やっぱり、駄目なものなのね。女のうちでも、私という女ひとりが、だめなのかも知れませんけれども、つくづく私は、自分を駄目だと思います。そう言いながらも、また、心の隅で、それでもどこか一ついいところが [...]
座興に非ず
座興に非ず 太宰治 おのれの行く末を思い、ぞっとして、いても立っても居られぬ思いの宵は、その本郷のアパアトから、ステッキずるずるひきずりながら上野公園まで歩いてみる。九月もなかば過ぎた頃のことである。私の白地の浴衣も、 [...]
葉桜と魔笛
葉桜と魔笛 太宰治 桜が散って、このように葉桜のころになれば、私は、きっと思い出します。――と、その老夫人は物語る。――いまから三十五年まえ、父はその頃まだ存命中でございまして、私の一家、と言いましても、母はその七年ま [...]
令嬢アユ
令嬢アユ 太宰治 佐野君は、私の友人である。私のほうが佐野君より十一も年上なのであるが、それでも友人である。佐野君は、いま、東京の或る大学の文科に籍を置いているのであるが、あまり出来ないようである。いまに落第するかも知 [...]
ひょっとこ
ひょっとこ 芥川龍之介 吾妻橋の欄干によって、人が大ぜい立っている。時々巡査が来て小言を云うが、すぐまた元のように人山が出来てしまう。皆、この橋の下を通る花見の船を見に、立っているのである。 船は川下から、一二艘ずつ [...]
心の王者 / 困惑の弁
心の王者 太宰治 先日、三田の、小さい学生さんが二人、私の家に参りました。私は生憎加減が悪くて寝ていたのですが、ちょっとで済む御話でしたら、と断って床から抜け出し、どてらの上に羽織を羽織って、面会いたしました。お二人と [...]
恥
恥 太宰治 菊子さん。恥をかいちゃったわよ。ひどい恥をかきました。顔から火が出る、などの形容はなまぬるい。草原をころげ廻って、わあっと叫びたい、と言っても未だ足りない。サムエル後書にありました。「タマル、灰を其の首に蒙 [...]
創作
創作 芥川龍之介 僕に小説をかけと云ふのかね。書けるのなら、とうに書いてゐるさ。が、書けない。遺憾ながら、職業に逐はれてペンをとる暇がない。そこで、人に話す、その人が、それを小説に書く。僕が材料を提供した小説が、これで [...]
悪魔
悪魔 芥川龍之介 伴天連うるがんの眼には、外の人の見えないものまでも見えたさうである。殊に、人間を誘惑に来る地獄の悪魔の姿などは、ありありと形が見えたと云ふ、――うるがんの青い瞳を見たものは、誰でもさう云ふ事を信じてゐ [...]
トロツコ
トロツコ 芥川龍之介 小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まつたのは、良平の八つの年だつた。良平は毎日村外れへ、その工事を見物に行つた。工事を――といつた所が、唯トロツコで土を運搬する――それが面白さに見に行つたので [...]
眉山
眉山 太宰治 これは、れいの飲食店閉鎖の命令が、未だ発せられない前のお話である。 新宿辺も、こんどの戦火で、ずいぶん焼けたけれども、それこそ、ごたぶんにもれず最も早く復興したのは、飲み食いをする家であった。帝都座の裏 [...]
水仙
水仙 太宰治 「忠直卿行状記」という小説を読んだのは、僕が十三か、四のときの事で、それっきり再読の機会を得なかったが、あの一篇の筋書だけは、二十年後のいまもなお、忘れずに記憶している。奇妙にかなしい物語であった。 剣術 [...]
親友交歓
親友交歓 太宰治 昭和二十一年の九月のはじめに、私は、或る男の訪問を受けた。 この事件は、ほとんど全く、ロマンチックではないし、また、いっこうに、ジャアナリスチックでも無いのであるが、しかし、私の胸に於いて、私の死ぬ [...]
古典風
古典風 太宰治 ―― こんな小説も、私は読みたい。(作者) A 美濃十郎は、伯爵美濃英樹の嗣子である。二十八歳である。 一夜、美濃が酔いしれて帰宅したところ、家の中は、ざわめいている。さして気にもとめずに、廊下を歩い [...]
走れメロス
走れメロス 太宰治 メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であっ [...]
鼻
鼻 芥川龍之介 禅智内供の鼻と云えば、池の尾で知らない者はない。長さは五六寸あって上唇の上から顋の下まで下っている。形は元も先も同じように太い。云わば細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているのであ [...]
駈込み訴え
駈込み訴え 太宰治 申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。 はい、はい。落ちついて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなり [...]
芋粥
芋粥 芥川龍之介 元慶の末か、仁和の始にあつた話であらう。どちらにしても時代はさして、この話に大事な役を、勤めてゐない。読者は唯、平安朝と云ふ、遠い昔が背景になつてゐると云ふ事を、知つてさへゐてくれれば、よいのである。 [...]
富岳百景
富嶽百景 太宰治 富士の頂角、広重の富士は八十五度、文晁の富士も八十四度くらゐ、けれども、陸軍の実測図によつて東西及南北に断面図を作つてみると、東西縦断は頂角、百二十四度となり、南北は百十七度である。広重、文晁に限らず [...]
桜桃
桜桃 太宰治 われ、山にむかいて、目を挙ぐ。 ―― 詩篇、第百二十一。 子供より親が大事、と思いたい。子供のために、などと古風な道学者みたいな事を殊勝らしく考えてみても、何、子供よ [...]
家庭の幸福
家庭の幸福 太宰治 「官僚が悪い」という言葉は、所謂「清く明るくほがらかに」などという言葉と同様に、いかにも間が抜けて陳腐で、馬鹿らしくさえ感ぜられて、私には「官僚」という種属の正体はどんなものなのか、また、それが、どん [...]
おぎん
おぎん 芥川龍之介 元和か、寛永か、とにかく遠い昔である。 天主のおん教を奉ずるものは、その頃でももう見つかり次第、火炙りや磔に遇わされていた。しかし迫害が烈しいだけに、「万事にかない給うおん主」も、その頃は一層この [...]
杜子春
杜子春 芥川龍之介 一 或春の日暮です。 唐の都洛陽の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでゐる、一人の若者がありました。 若者は名は杜子春といつて、元は金持の息子でしたが、今は財産を費ひ尽して、その日の暮しにも困る位、 [...]
新樹の言葉
新樹の言葉 太宰治 甲府は盆地である。四辺、皆、山である。小学生のころ、地理ではじめて、盆地という言葉に接して、訓導からさまざまに説明していただいたが、どうしても、その実景を、想像してみることができなかった。甲府へ来て [...]
黄金風景
黄金風景 太宰治 海の岸辺に緑なす樫の木、その樫の木に黄金の細き鎖のむすばれて ―プウシキン― 私は子供のときには、余り質のいい方ではなかった。女中をいじめた。私は、のろくさいことは嫌いで、それゆえ、のろくさい女中を殊 [...]
羅生門
羅生門 芥川龍之介 ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。 広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗の剥げた、大きな円柱に、蟋蟀が一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路に [...]
太宰治(だざい おさむ)
近現代作家目録へ ((太宰治に言寄せての当サイト主催者随想録:「かたりべ:太宰がいたからめげずにいられる」)) <あ> あさましきもの ★★★ 人の心は見えないけれど、行動を透かして見えた気になる時もある。「読めた!見 [...]
あさましきもの
あさましきもの 太宰治 賭弓に、わななくわななく久しうありて、はづしたる矢の、もて離れてことかたへ行きたる。 こんな話を聞いた。 たばこ屋の娘で、小さく、愛くるしいのがいた。男は、この娘のために、飲酒をやめようと決心 [...]
あばばばば
あばばばば 芥川龍之介 保吉はずつと以前からこの店の主人を見知つてゐる。 ずつと以前から、 ― 或はあの海軍の学校へ赴任した当日だつたかも知れない。彼はふとこの店へマツチを一つ買ひにはひつた。店には小さい飾り窓があり [...]
芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
近現代作家目録へ <あ> 悪魔(あくま) ・・・遠い昔の戦国の世の終わり、織田信長存命の頃、ある姫君に取り憑いて、難なくバテレン神父にとっつかまった、柄にもなく不思議に美しい姿をした一匹の悪魔の物語。 ★★ 抽象概念 [...]
近現代作家
・・・古典時代以降(おおまかに言えば、明治時代以降)の日本文学の中で、読むべき価値ある名作(or踏まえておくべき問題作)である、と、当サイト主宰者(之人冗悟:のと・じゃうご)が確信をもってお勧めできる作品・・・のうち、 [...]
蜘蛛の糸
蜘蛛の糸 芥川龍之介 一 ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊からは、何と [...]
声