百一079解題)秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ

秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ
『新古今集』秋上・四一三(左京大夫顕輔:さきゃうのだいぶあきすけ)(男性)

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解題

 叙情の影も宿さぬ叙景一辺倒の歌ながら、そのイメージ訴求力の高さで『新古今和歌集』(1210年代成立)に収められている作品である。「言葉による絵画」と言ってもよいこの歌に、現代語訳の必要はないであろう。修辞としては「月の影のさやけさ」の「体言止め」を指摘し得るぐらいで、それ以上の解題を加えるには、言葉にらず絵筆に頼って絵画を添える以外なにもあるまい。
 詠み手描き手と言うべきか)は藤原顕輔(1090-1155)。歌道の家柄である「六条藤家」の人で、一門随一の歌人に与えられる「人麻呂影供」を父(藤原顕季)から受け継いでいる。最終官位は「左京大夫(正三位)」。1144年に崇徳上皇の院宣を受けて、第六の勅撰和歌集『詞花集』(1151成立)を単独で撰進した歌人である。
 『詞花集』は、直前の第五勅撰集『金葉集』(1126)から僅か25年で編まれている。それまでの勅撰集の撰進周期がほぼ半世紀であることから考えると半分の時間的間隔しか置かれていないが、これは前作『金葉集』が(当代の新奇な歌風にこだわり過ぎるなど)失敗作とみなされたため、早急に修正版を作ろうとしたためである。そのため、『金葉集(第三奏本)』と『詞花集』には重複する和歌が多く、収録和歌数も前者(約650首)+後者(415首)を合わせてほぼ1000首(重複を除外すればもう少し小さくなる)、これでようやく勅撰集の平均収録歌数である。
 そうした経緯を抱えているだけに、『詞花集』は『金葉集』より一代前の『後拾遺集』(1086)時代の歌人を中核とし、当代の歌人は原則的に一人一首に限定している(撰進院宣を出した崇徳院と、撰者の顕輔だけは例外)。歌風は雑多だが、この第79番歌(これは『新古今集』の収録歌だが)に見られるような清々しい叙景詩をその一特色として挙げてもよいであろう。

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