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夏の夜はまだ宵ながら
  明けぬるを
    雲のいづこに月やどるらむ

This summer night seems to have broken into dawn,
While we stayed up here thinking it was barely evening.
Behind what clouds in the sky is the moon hiding now?

『小倉百人一首』036
なつのよは まだよひながら あけぬるを
 くものいづこに つきやどるらむ
清原深養父(きよはらのふかやぶ)
男性(官歴あり=908-930)
『古今集』夏・一六六
夏の夜の明けるのは早くて、
まだ宵の口だと思っているうちに、
あっという間に朝が来てしまった・・・
こんなせっかちな夜明けには、
月が沈む間もあるまいに・・・
おーい、お月さん、
雲のどのあたりに隠れているんだい?
【文法・修辞法】係り結び
...modern Japanese/English part: Copyright(C) fusau.com 2009
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品詞分解
なつ【夏】<名>
の【の】<格助>
よ【夜】<名>
は【は】<係助>
まだ【未だ】<副>
よひ【宵】<名>
ながら【ながら】<接助>
あけ【明け】<自カ下二>連用形
ぬる【ぬる】<助動_完了>連体形
を【を】<接助>
くも【雲】<名>
の【の】<格助>
いづこ【何処】<代名>
に【に】<格助>
つき【月】<名>
やどる【宿る】<自ラ四>終止形
らむ【らむ】<助動_推量>連体形・・・疑問詞「いづこ」との係り結び
解題
 現代語訳の必要もないほどに、用語も修辞も平易な短歌・・・だけど一応訳してみる:「夏の夜は、まだ宵の口だ(と少なくとも私は思っていた)というのに、もう夜明けになっちゃって、まったくもう・・・早いよー!こんなに早く夜明けが来ちゃったんじゃ、お月さんだって沈みようがないじゃないの・・・って、あれ?いないねー、お月さま?雲のどこかに隠れてるのかな?・・・おーい、どこだーい?出ておいでよ・・・まさか、あんたまでもう沈んじゃったんじゃ、ないよねー?」
 ・・・って、当然、お月様だってもう退場済みだからこそ朝が来ちゃってる訳で、この歌人だってそれぐらいわかってる訳だけど、それを百も承知で、「お月さまだって、まだ、雲のどこかに隠れてるんだろうさ、きっと」と言ってるってことは、「まだ、この夜が終わっちゃったとは、認めたくない」ってことで、それだけその夜が、名残惜しいってことでしょうね、きっと。
 でも、この歌の「早くも夜が明けてしまって、名残りが尽きない」は、「まだ十分に満喫していないのに・・・心残り」という否定的な感情に結び付いて例の「有明の月」の「歌枕」の上で涙を流すような"哀調"のものではなくて、「あー、楽しかった!できればこのままずっと楽しんでいたいなー・・・でも、そうもいかんのだよねー。うん、よかった、よかった、とってもよかった。この素晴らしき夜に、感謝!」って感じの"陽性"の名残惜しさ。変にしんみりした連想に結び付けないために、「有明の月が、物足りなさそうに、夜空にまだ残っている・・・」とかの表現の代わりに「どの雲の陰にお月さまは隠れてるんだろうねー?」と剽軽ってるわけで、なぁーんにも考えてなさそうなアッケラカーンとした明るい響き(音楽業界で言うところの"C調メロディー")の陰では、結構気を遣って表現を選んであったのね、これ、って感じが、歌読みならぬ歌詠みには、しっかり伝わってくる歌です。
 場面は、たぶん、気の置けない仲間どうしで夜通しわいわいがやがややる宴会か何かでしょうね。「あ、もう朝かあ・・・じゃ、もうそろそろお開きだね・・・それにしても、楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうものだね・・・もう少し夜が長くても、よさそうなものなのにね」と、真面目な人の散文ならそういう結びになるところを、剽軽な歌で逆説的に明るく嘆いてみせているこの歌が、それを聞いた参加者の面々にまた笑顔を浮かべさせている図が、目に浮かぶようです。
 もしこれが、愛する女性と濃密な夜を過ごした後で出てきた歌ならば、ちょっとムードが違うかな、って感じ。そういうシチュエーションでこういう歌を詠んじゃう男の人だとしたら、その人はきっと、お喋りで、サービス精神旺盛で、頭の回転が速くて、一緒にいて退屈しない男の人だけど、黙ってムード出してほしい時にも「マジメに黙り込んで事を運ぶのは照れ臭いから」みたいな感じで独り言もごもご言いながら口は絶えず動かしていないと落ち着かない人、そんなイメージが浮かぶ歌ですね(・・・これがもし女性とのプライベートな夜の作なら、ですよ)。
 因みに、『古今和歌集』(905)には、「月のおもしろかりける夜、あかつきがたによめる」と、付けずもがなの「詞書」が添えてあります。でも、秋の中秋の名月を見てる訳じゃなくて、ドンチャン騒ぎの夜明かし向きの夏の夜の歌で、「月」を主役に固定するような但し書きを添えるのは、無粋だと思いません?上で解題したような「仲間たちとの夜通しのの終わり・・・の明るーい名残惜しさ」を主役に据える自由度を、変に狭めるこんな「詞書」添えるってことは、つまりその編者には上述の解題のような想像は浮かばなかった、ってことなのだから、その一点だけでも詩人としては恥だと思う。たとえ「事実、この歌人は、そうした状況下でこの歌を詠んだのだ」としても、そんな事実性なんて芸術(特に、和歌)に於いては何の意味も成さないばかりか、逆に想像力の飛翔を妨げる足枷になる場合だって多いんだから、芸術家としては、弁明の余地なし。このあたりの事情に考えが至らない無粋蛇足の「詞書」を見るたびに、「あーあ、日本の文芸の程度って、こんなもの?」とがっかりさせられちゃう。もう終わっちゃったものに今更修正は効かないから、古典作品のこうした至らぬ点・出過ぎた点に出くわした時には「軽く舌打ちしただけで、後はひたすら無視スルー」が良いでしょう、とだけ言っておこう、っと(・・・あはは、また一部の日本人を怒らせちゃったかしらん)。
 この歌の作者は、清原深養父。従五位下と官位は低いながらも『古今集』には十七首入集(僧正遍昭・藤原興風らと同じ数)というのは、著名な古今歌人にはお馴染みのパターン。というか、この人の場合、あの清少納言のひいおじいさん、と紹介したほうがいいでしょうね(清少納言の"清"は"清原"の"清")。そう考えると、上の歌にも、通じるところ、ありません?『枕草子』(1000年頃成立)を通して知ることのできる、社交とお喋りと人間が大好きな、あの陽気な才女清少納言のイメージ・・・もっとも、清少納言の場合、歌のほうは「わたし、だめ」と(偉大なるご先祖さまを持ったばかりに)コンプレックスの対象でしかなかったようですけど。
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