伊勢物語075)海松

伊勢物語075)海松
 昔、男、「伊勢の国に率ていきてあらむ。」といひければ、女、
  大淀の浜に生ふてふみるからに心はなぎぬかたらはねども  
といひて、ましてつれなかりければ、男、
  袖ぬれてあまのかりほすわたつうみのみるをあふにてやまむとやする  
女、
  岩間より生ふるみるめしつれなくはしほ干ししほ満ちかひもありなむ  
また、男、
  涙にぞぬれつつしぼる世の人のつらきは心の袖のしづくか  
世にあふことかたき女になむ。
以下、アンチョコ現代語訳・・・作った人は→之人冗悟(Noto Jaugo) of http://fusaugatari.com/
現代日本語訳

伊勢物語075)海松
 その昔、一人の男が、「あなたを伊勢の国に連れて行って共に生活したい」と言ったので、女は、
  大淀の浜辺に生えているという「海松(=みる)」じゃないけれど、私の心は、男女の親密なひそひそ話などしなくとも、あなたの姿をただ「見る(=みる)」だけでもうすっかり落ち着いてしまいました(ので、伊勢の国まで御一緒するまでもありません)  
と言って、以前にもまして冷淡な態度だったので、男は次のような歌を詠んだ。
  漁師が海水に濡れた服の袖を乾かしながら、海中から刈り取って浜辺に干す「海松(=みる)」じゃないけれど、ただ姿を「見る(=みる)」だけで、親密な男女の逢瀬の代わりにしよう、とあなたは考えているのでしょうか?  
これに対する女の返歌は、これ。
  海中の岩の間から生える「海末布(=みるめ)」じゃないけれど、干潮の時も満潮の時も常に変わらずがんばり続けていたならば、思いをかける相手との逢瀬、つまりは「見る目(=みるめ)」が叶うことだって、きっとあるというものでしょうよ  
男はまた次のような歌を詠んだ。
  涙に泣き濡れて絞る私の袖、その湿っぽい滴をもたらしたものは、薄情なあなたの心でしょうか?  
実に、男と女の関係を結ぶのが大変な女ではあった。

現代語訳著作者=之人冗悟(のとじゃうご)・・・(C)2011http://fusaugatari.com/

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