宇治拾遺物語(巻十一 十)134日蔵上人吉野山にて鬼にあふ事

 昔、吉野山の日蔵の君、吉野の奥におこなひありき給ひけるに、たけ七尺ばかりの鬼、身の色は紺青の色にて、髪は火のごとくに赤く、くび細く、むね骨は、ことにさしいでて、いらめき、腹ふくれて、脛は細くありけるが、このおこなひ人にContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十一 十)134日蔵上人吉野山にて鬼にあふ事

宇治拾遺物語(巻十一 十二)136出家功徳の事

 これも今は昔、筑紫に、たうさかのさへと申す齋の神まします。そのほこらに、修行しける僧のやどりてねたりける夜、夜中ばかりになりぬらんと思ふほどに、馬の足音あまたして、人の過ぐると聞くほどに、「齋はましますか」と問ふ声す。Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十一 十二)136出家功徳の事

宇治拾遺物語(巻十二 一)137達磨天竺僧の行ひ見る事

 昔、天竺に一寺あり。住僧もつともおほし。達磨和尚、この寺に入りて、僧どもの行をうかがひ見給ふに、ある坊には念仏し、経をよみ、さまざまに行ふ。ある坊を見給ふに、八九十ばかりなる老僧の、只二人ゐて囲碁を打つ。仏もなく、経もContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 一)137達磨天竺僧の行ひ見る事

宇治拾遺物語(巻十二 二)138提婆菩薩、龍樹菩薩の許に参る事

 昔、西天竺に龍樹菩薩と申す上人まします。智恵甚深なり。また、中天竺に提婆菩薩と申す上人、龍樹の智恵深きよしを聞き給ひて、西天竺に行き向ひて、門外にたちて、案内を申さんとし給ふ所に、御弟子、ほかより来給ひて、「いかなる人Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 二)138提婆菩薩、龍樹菩薩の許に参る事

宇治拾遺物語(巻十二 三)139慈恵僧正受戒の日延引の事

 慈恵僧正良源、座主の時、受戒行ふべき定日、例のごとく催し設けて、座主の出仕を相待つの所に、途中よりにはかに帰り給へば、供の者ども、こはいかにと、心得難く思ひけり。衆徒、諸職人も、「これ程の大事、日の定まりたる事を、今とContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 三)139慈恵僧正受戒の日延引の事

宇治拾遺物語(巻十二 四)140内記上人、法師陰陽師の紙冠を破る事

 内記上人寂心といふ人ありけり。道心堅固の人なり。「堂を造り、塔を立つる、最上の善根なり」とて、勘進せられけり。材木をば、播磨国に行きて取られけり。ここに法師陰陽師、紙冠を着て、祓するを見つけて、あわてて馬よりおりて、馳Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 四)140内記上人、法師陰陽師の紙冠を破る事

宇治拾遺物語(巻十二 五)141持経者叡實効験の事

 昔、閑院大臣殿、三位中将におはしける時、わらは病み重くわづらひ給ひけるが、「神名といふ所に、叡實といふ持経者なん、童やみはよく祈りおとし給ふ」と申す人ありければ、「この持経者にいのらせん」とて行き給ふに、荒見川の程にてContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 五)141持経者叡實効験の事

宇治拾遺物語(巻十二 六)142空也上人の臂観音院僧正祈り直す事

 昔、空也上人、申すべき事ありて、一条大臣殿に参りて、蔵人所に上りて居たり。余慶僧正また参会し給ふ。物語などし給ふほどに、僧正の宣ふ、「その臂は、いかにして折り給へるぞ」と。上人のいはく、「我が母、物妬みして、幼少の時、Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 六)142空也上人の臂観音院僧正祈り直す事

宇治拾遺物語(巻十二 七)143増賀上人三条の宮に参り振舞の事

 昔、多武嶺に、増賀上人とて貴き聖おはしけり。きはめて心たけう、きびしくおはしけり。ひとへに名利を厭ひて、頗る物狂はしくなん、わざと振舞ひ給ひける。  三条大后の宮、尼にならせ給はんとて、戒師のために、召しに遣はされけれContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 七)143増賀上人三条の宮に参り振舞の事

宇治拾遺物語(巻十二 八)144聖宝僧正、一条大路渡る事

 昔、東大寺に上座法師のいみじく楽しきありけり。露ばかりも、人に物与ふる事をせず、慳貪に罪深く見えければ、その時聖宝僧正の、若き僧にておはしけるが、この上座の、物惜しむ罪のあさましきにとて、わざとあらがひをせられけり。「Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 八)144聖宝僧正、一条大路渡る事

宇治拾遺物語(巻十二 十二)148高忠侍歌よむ事

 今は昔、高忠といひける越前守の時に、いみじく不幸なりける侍の、夜昼まめなるが、冬なれど、帷をなん着たりける。雪のいみじく降る日、この侍、きよめすとて、物のつきたるやうに震ふを見て、守、「歌詠め、をかしう降る雪かな」と申Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 十二)148高忠侍歌よむ事

宇治拾遺物語(巻十二 十八)154貧しき俗、仏性を観じて富める事

 今は昔、唐土の辺州に一人の男あり。家貧しくして、宝なし。妻子を養ふに力なし。もとむれども、得ることなし。かくて歳月を経。思ひわびて、僧にあひて、宝を得べき事を問ふ。智恵ある僧にて、こたふるやう、「汝、寶を得んと思はば、Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十二 十八)154貧しき俗、仏性を観じて富める事

宇治拾遺物語(巻十三 十)170慈覚大師、纐纈城に入り給ふ事

 昔、慈覚大師、仏法を習ひ伝へんとて、唐土へ渡り給ひておはしけるほどに、会昌年中に、唐の武宗、仏法をほろぼして、堂塔をこぼち、僧尼をとらへて失ひ、あるいは還俗せしめ給ふ乱に合ひ給へり。大師をもとらへんとしけるほどに、逃げContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十三 十)170慈覚大師、纐纈城に入り給ふ事

宇治拾遺物語(巻十三 十二)172寂昭上人鉢を飛す事

 今は昔、三河入道寂昭といふ人、唐に渡りて後、唐の王、やんごとなき聖どもを召し集めて、堂を飾りて、僧膳を設けて、経を講じ給ひけるに、王宣はく、「今日の斎莚は、手長の役あるべからず。おのおの我が鉢を飛ばせやりて、物は受くべContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十三 十二)172寂昭上人鉢を飛す事

宇治拾遺物語(巻十三 十四)174優婆崛多の弟子の事

 今は昔、天竺に、仏の御弟子優婆崛多といふ聖おはしき。如来滅後百年ばかりありて、その聖に弟子ありき。いかなる心ばへをか見給ひたりけん、「女人に近づくことなかれ。女人に近づけば、生死にめぐること車輪のごとし」と、つねにいさContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十三 十四)174優婆崛多の弟子の事

宇治拾遺物語(巻十四 一)175海雲比丘の弟子童の事

 今は昔、海雲比丘、道を行き給ふに、十余歳ばかりなる童子、道にあひぬ。比丘、童に問ひていふ、「何の料の童ぞ」と宣ふ。童答へていふ、「ただ道まかる者にて候ふ」と言ふ。比丘いふ、「汝は法華経はよみたりや」ととへば、童いふ、「Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十四 一)175海雲比丘の弟子童の事

宇治拾遺物語(巻十四 二)176寛朝僧正、勇力の事

 今は昔、遍照寺僧正寛朝といふ人、仁和寺をもしりければ、仁和寺のやぶれたるところ修理せさすとて、番匠どもあまたつどひて作りけり。日暮れて、番匠ども、おのおの出でてのちに、「けふの造作はいかほどしたるぞ」とみんと思ひて、僧Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十四 二)176寛朝僧正、勇力の事

宇治拾遺物語(巻十四 五)179新羅国の后金の榻の事

 これも今は昔、新羅国に后おはしけり。その后、忍びて密男を設けてけり。帝この由を聞き給ひて、后を捕へて、髪に繩をつけて、上へつりつけて、足を二三尺引き上げて置きたりければ、すべきやうもなくて、心のうちに思ひ給ひけるやう、Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十四 五)179新羅国の后金の榻の事

宇治拾遺物語(巻十五 六)191極楽寺僧仁王経の験を施す事

 これも今は昔、堀川太政大臣と申す人、世心地大事にわづらひ給ふ。御祈りどもさまざまにせらる。世にある僧どもの参らぬはなし。参り集ひて御祈どもをす。殿中騒ぐ事限りなし。ここに極楽寺は、殿の造り給へる寺なり。その寺に住みけるContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十五 六)191極楽寺僧仁王経の験を施す事

宇治拾遺物語(巻十五 七)192伊良縁野世恒、毘沙門の御下文を給はる事

 今は昔、越前国に、伊良縁の世恒といふ者ありけり。とりわきてつかうまつる毘沙門に、物も食はで、物のほしかりければ、「助け給へ」と申しけるほどに、「門にいとをかしげなる女の、家主に物いはんと宣ふ」と言ひければ、誰にかあらんContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十五 七)192伊良縁野世恒、毘沙門の御下文を給はる事

宇治拾遺物語(巻十五 八)193相応和尚、都卒天に上ぼる事 附・染殿の后祈り奉る事

 今は昔、叡山無動寺に、相応和尚といふ人おはしけり。比良山の西に、葛川の三瀧といふ所にも、通ひて行ひ給ひけり。その瀧にて、不動尊の申し給はく、「我を負ひて、都卒の内院、弥勒菩薩の御許に率て行き給へ」と、あながちに申しけれContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十五 八)193相応和尚、都卒天に上ぼる事 附・染殿の后祈り奉る事

宇治拾遺物語(巻十五 九)194仁戒上人往生の事

 これも今は昔、南京に仁戒上人といふ人ありけり。山階寺の僧なり。才学、寺中に並ぶ輩なし。しかるに、にはかに道心をおこして、寺を出でんとしけるに、その時の別当興正僧都、いみじう惜しみて、制しとどめて、出だし給はず。しわびてContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十五 九)194仁戒上人往生の事

宇治拾遺物語(巻十五 十)195秦始皇天竺より来たる僧禁獄の事

 今は昔、唐の秦始皇の代に、天竺より僧渡れり。帝あやしみ給ひて、「これはいかなる者ぞ。何事によりて来たれるぞ」。僧申していはく、「釈迦牟尼仏の御弟子なり。仏法を伝へんために、遙かに西天より来たり渡れるなり」と申しければ、Continue reading… 宇治拾遺物語(巻十五 十)195秦始皇天竺より来たる僧禁獄の事

宇治拾遺物語(巻十五 十二)197盗跖と孔子と問答の事

 これも今は昔、唐土に、柳下恵といふ人ありき。世の賢き者にして、人に重くせらる。その弟に、盗跖と言ふものあり。一つの山ふところに住みて、もろもろの悪しき者を招き集めて、おのが伴侶として、人の物をば我が物とす。ありくときはContinue reading… 宇治拾遺物語(巻十五 十二)197盗跖と孔子と問答の事