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太宰治

佳日

By のとじゃうご on 2010/09/30

佳日 太宰治  これは、いま、大日本帝国の自存自衛のため、内地から遠く離れて、お働きになっている人たちに対して、お留守の事は全く御安心下さい、という朗報にもなりはせぬかと思って、愚かな作者が、どもりながら物語るささやかな [...]

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千代女

By のとじゃうご on 2010/09/29

千代女 太宰治  女は、やっぱり、駄目なものなのね。女のうちでも、私という女ひとりが、だめなのかも知れませんけれども、つくづく私は、自分を駄目だと思います。そう言いながらも、また、心の隅で、それでもどこか一ついいところが [...]

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座興に非ず

By のとじゃうご on 2010/09/28

座興に非ず 太宰治  おのれの行く末を思い、ぞっとして、いても立っても居られぬ思いの宵は、その本郷のアパアトから、ステッキずるずるひきずりながら上野公園まで歩いてみる。九月もなかば過ぎた頃のことである。私の白地の浴衣も、 [...]

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葉桜と魔笛

By のとじゃうご on 2010/09/27

葉桜と魔笛 太宰治  桜が散って、このように葉桜のころになれば、私は、きっと思い出します。――と、その老夫人は物語る。――いまから三十五年まえ、父はその頃まだ存命中でございまして、私の一家、と言いましても、母はその七年ま [...]

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令嬢アユ

By のとじゃうご on 2010/09/26

令嬢アユ 太宰治  佐野君は、私の友人である。私のほうが佐野君より十一も年上なのであるが、それでも友人である。佐野君は、いま、東京の或る大学の文科に籍を置いているのであるが、あまり出来ないようである。いまに落第するかも知 [...]

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心の王者 / 困惑の弁

By のとじゃうご on 2010/09/24

心の王者 太宰治  先日、三田の、小さい学生さんが二人、私の家に参りました。私は生憎加減が悪くて寝ていたのですが、ちょっとで済む御話でしたら、と断って床から抜け出し、どてらの上に羽織を羽織って、面会いたしました。お二人と [...]

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恥

By のとじゃうご on 2010/09/23

恥 太宰治  菊子さん。恥をかいちゃったわよ。ひどい恥をかきました。顔から火が出る、などの形容はなまぬるい。草原をころげ廻って、わあっと叫びたい、と言っても未だ足りない。サムエル後書にありました。「タマル、灰を其の首に蒙 [...]

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眉山

By のとじゃうご on 2010/09/19

眉山 太宰治  これは、れいの飲食店閉鎖の命令が、未だ発せられない前のお話である。  新宿辺も、こんどの戦火で、ずいぶん焼けたけれども、それこそ、ごたぶんにもれず最も早く復興したのは、飲み食いをする家であった。帝都座の裏 [...]

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水仙

By のとじゃうご on 2010/09/18

水仙 太宰治 「忠直卿行状記」という小説を読んだのは、僕が十三か、四のときの事で、それっきり再読の機会を得なかったが、あの一篇の筋書だけは、二十年後のいまもなお、忘れずに記憶している。奇妙にかなしい物語であった。  剣術 [...]

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親友交歓

By のとじゃうご on 2010/09/17

親友交歓 太宰治  昭和二十一年の九月のはじめに、私は、或る男の訪問を受けた。  この事件は、ほとんど全く、ロマンチックではないし、また、いっこうに、ジャアナリスチックでも無いのであるが、しかし、私の胸に於いて、私の死ぬ [...]

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古典風

By のとじゃうご on 2010/09/16

古典風 太宰治 ―― こんな小説も、私は読みたい。(作者) A  美濃十郎は、伯爵美濃英樹の嗣子である。二十八歳である。  一夜、美濃が酔いしれて帰宅したところ、家の中は、ざわめいている。さして気にもとめずに、廊下を歩い [...]

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走れメロス

By のとじゃうご on 2010/09/15

走れメロス 太宰治  メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であっ [...]

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駈込み訴え

By のとじゃうご on 2010/09/13

駈込み訴え 太宰治  申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。  はい、はい。落ちついて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなり [...]

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富岳百景

By のとじゃうご on 2010/09/11

富嶽百景 太宰治  富士の頂角、広重の富士は八十五度、文晁の富士も八十四度くらゐ、けれども、陸軍の実測図によつて東西及南北に断面図を作つてみると、東西縦断は頂角、百二十四度となり、南北は百十七度である。広重、文晁に限らず [...]

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桜桃

By のとじゃうご on 2010/09/10

桜桃 太宰治    われ、山にむかいて、目を挙ぐ。                 ―― 詩篇、第百二十一。  子供より親が大事、と思いたい。子供のために、などと古風な道学者みたいな事を殊勝らしく考えてみても、何、子供よ [...]

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家庭の幸福

By のとじゃうご on 2010/09/09

家庭の幸福 太宰治 「官僚が悪い」という言葉は、所謂「清く明るくほがらかに」などという言葉と同様に、いかにも間が抜けて陳腐で、馬鹿らしくさえ感ぜられて、私には「官僚」という種属の正体はどんなものなのか、また、それが、どん [...]

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新樹の言葉

By のとじゃうご on 2010/09/06

新樹の言葉 太宰治  甲府は盆地である。四辺、皆、山である。小学生のころ、地理ではじめて、盆地という言葉に接して、訓導からさまざまに説明していただいたが、どうしても、その実景を、想像してみることができなかった。甲府へ来て [...]

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黄金風景

By のとじゃうご on 2010/09/05

黄金風景 太宰治 海の岸辺に緑なす樫の木、その樫の木に黄金の細き鎖のむすばれて ―プウシキン―  私は子供のときには、余り質のいい方ではなかった。女中をいじめた。私は、のろくさいことは嫌いで、それゆえ、のろくさい女中を殊 [...]

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あさましきもの

By のとじゃうご on 2010/09/03

あさましきもの 太宰治 賭弓に、わななくわななく久しうありて、はづしたる矢の、もて離れてことかたへ行きたる。  こんな話を聞いた。  たばこ屋の娘で、小さく、愛くるしいのがいた。男は、この娘のために、飲酒をやめようと決心 [...]

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