宇治拾遺物語(巻四 三)055薬師寺の別当の事
今は昔、薬師寺の別当僧都といふ人ありけり。別当はしけれども、ことに寺の物もつかはで、極楽に生まれんことをなん願ひける。 年老い、病して、死ぬるきざみになりて、念仏して消え入らんとす。無下にかぎりと見ゆるほどに、よろし [...]
宇治拾遺物語(巻四 四)056妹背島の事
土佐国幡多の郡に住む下種ありけり。おのが国にはあらで、異国に田をつくりけるが、おのがすむ国に苗代をして、植うべきほどになりければ、その苗を舟に入れて、植ゑん人どもに食はすべき物よりはじめて、鍋、釜、鋤、鍬、からすきなど [...]
宇治拾遺物語(巻四 六)058東北院の菩提講の聖の事
東北院の菩提講はじめける聖は、もとはいみじき悪人にて、獄に七度ぞ入たりける。七たびといひけるたび、検非違使ども集まりて、「これはいみじき悪人なり。一二度獄にゐんだに、人としてはよかるべきことかは。ましていくそくばくの犯 [...]
宇治拾遺物語(巻四 十一)063後朱雀院丈六の仏作り奉り給ふ事
これも今は昔、後朱雀院、例ならぬ御事、大事におはしましける時、後生の事、恐れ思し召しけり。それに御夢に、御堂入道殿参りて、申し給ひていはく、「丈六の仏を作れる人、子孫に於いて、更に悪道へ堕ちず。それがし多くの丈六を造り [...]
宇治拾遺物語(巻四 十七)069慈恵僧正戒壇築きたる事
これも今は昔、慈恵僧正は近江国浅井郡の人なり。叡山の戒壇を、人夫かなはざりければ、え築かざりけるころ、浅井の郡司は、親しき上に、師壇にて仏事を修する間、この僧正を請じ奉りて、僧膳の料に、前にて大豆を炒りて酢をかけけるを [...]
宇治拾遺物語(巻八 三)101信濃国の聖の事
今は昔、信濃国に法師ありけり。さる田舎にて法師になりにければ、まだ受戒もせで、いかで京に上りて、東大寺といふ所にて受戒せんと思ひて、とかくして上りて、受戒してけり。 さてもとの国へ帰らんと思ひけれども、よしなし、さる [...]
宇治拾遺物語(巻八 五)103東大寺華厳会の事
これも今は昔、東大寺に恒例の大法会あり。華厳会とぞいふ。大仏殿の内に高座を立てて、講師上りて、堂の後よりかい消つやうにして、逃げて出でつるなり。古老の伝へていはく、「御寺建立のはじめ、鯖を売る翁来たる。ここに本願の上皇 [...]
宇治拾遺物語(巻十三 一)161上緒の主金を得る事
今は昔、兵衛佐なる人ありけり。冠の上緒の長かりければ、世の人、「上緒の主」となん、つけたりける。西の八條と京極との畠の中に、あやしの小家一つあり。その前を行くほどに、夕立のしければ、この家に、馬よりおりて入りぬ。みれば [...]
宇治拾遺物語(巻十三 八)168出雲寺別当、父鯰になりたるを知りながら殺して食ふ事
今は昔、王城の北、上つ出雲寺といふ寺、たててより後、年久しくなりて、御堂も傾きて、はかばかしう修理する人もなし。この近う、別当侍りき。その名をば、上覚となん言ひける。これぞ前の別当の子に侍りける。あひつぎつつ、妻子もた [...]
宇治拾遺物語(巻十四 四)178魚養の事
今は昔、遣唐使の唐にある間に、妻を設けて、子を生ませつ。その子いまだいとけなきほどに、日本に帰る。妻に契りて曰く、「異遣唐使行かんにつけて、消息やるべし。またこの子、乳母離れん程には迎へ取るべし」と契りて帰朝しぬ。母、 [...]
宇治拾遺物語(巻十五 一)186清見原天皇、大友皇子と合戦の事
今は昔、天智天皇の御子に、大友皇子といふ人ありけり。太政大臣になりて、世の政を行ひてなんありける。心の中に、「帝失ひ給ひなば、次の帝には、我ならん」と思ひ給ひけり。清見原天皇、その時は春宮にておはしましけるが、この気色 [...]
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