土佐日記12/26

 廿六日。なほ守の館にて、あるじしののしりて、郎等までにものかづけたり。唐詩、声あげて言ひけり。和歌、あるじもまらうども、こと人もいひあへりけり。唐詩はこれにえ書かず。和歌、あるじの守のよめりける、
  都いでて君に逢はむと来しものを来しかひもなく別れぬるかな  
となむありければ、帰る前の守のよめりける、
  白妙の波路を遠くゆきかひてわれに似べきはたれならなくに  
こと人人のもありけれど、さかしきもなかるべし。とかくいひて、前の守、今のも、もろともに下りて、今のあるじも、前のも、手とりかはして、酔ひ言に心よげなる言して、出で入りにけり。
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