土佐日記01/30

 卅日。雨風吹かず。海賊は夜あるきせざなりと聞きて、夜なかばかりに舟を出だして、阿波の水門をわたる。夜なかなれば、西東も見えず。男女からく神仏を祈りて、この水門をわたりぬ。寅卯の時ばかりに、沼島といふところを過ぎて、田奈川といふところをわたる。からくいそぎて、和泉の灘といふところにいたりぬ。今日、海に波に似たるものなし。神仏のめぐみかうぶれるに似たり。今日、舟にのりし日よりかぞふれば、三十日あまり九日になりにけり。今は和泉の国に来ぬれば、海賊ものならず。
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