土佐日記02/06

 六日。澪標のもとより出でて、難波につきて、川尻に入る。みな人人、媼、翁、額に手をあててよろこぶこと二つなし。かの舟酔ひの淡路の島の大御、「都近くなりぬ」といふを喜びて、舟底よりかしらをもたげて、かくぞいへる。
  いつしかといぶせかりつる難波潟葦漕ぎそけて御舟来にけり  
いとおもひのほかなる人のいへれば、人人あやしがる。これがなかに、心ちなやむ舟君いたくめでて、「舟酔ひしたうべりし御顔には、似ずもあるかな」といひける。
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