土佐日記02/07

 七日。今日、川尻に舟入り立ちて、漕ぎ上るに、川の水干て、なやみわづらふ。舟の上ることいとかたし。かかるあひだに、舟君の病者、もとよりこちごちしき人にて、かうやうのことさらに知らざりけり。かかれども、淡路たうめの歌にめでて、都ほこりにもやあらむ、からくして、あやしき歌ひねり出だせり。その歌は、
  来と来ては川上り路の水を浅み舟もわが身もなづむ今日かな  
これは、病ひをすればよめるなるべし。一歌にことのあかねば、今一つ、
  とくと思ふ舟なやますはわがために水の心の浅きなりけり  
この歌は、都近くなりぬるよろこびにたへずしていへるなるべし。淡路の御の歌に劣れり。「嫉き。いはざらましものを」と、くやしがるうちに、夜になりて寝にけり。
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