宇治拾遺物語(巻一 九)009宇治殿倒れさせ給ひて実相房僧正験者に召さるる事

  これも今は昔、高陽院造らるる間、宇治殿御騎馬にて渡らせふ間、倒れさせ給ひて心地はせ給ふ。「心誉僧正られん」とてしにはすほどに、いまだらざる先に、女房の局なる女に物憑きて申していはく、「の事にあらず。きと目見入れ奉るによりて、かくおはしますなり。僧正参られざる先に、護法先だちて参りて追ひ払ひへば、逃げをはりぬ」とこそ申しけれ。すなはち、よくならせ給ひにけり。心誉僧正いみじかりけるとか。
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