宇治拾遺物語(巻三 十)042同人仏事の事

 今は昔、伯の母仏供養しけり。永縁僧正を請じて、さまざまの物どもを奉る中に、紫の薄様に包みたる物あり。あけて見れば、
  朽ちけるに長柄の橋の橋柱法のためにも渡しつるかな  
長柄の橋の切なりけり。
 またの日まだつとめて、若狭阿闍梨隆源といふ人、歌よみなるが来たり。「あはれ、この事を聞きたるよ」と僧正思すに、懐より名簿を引き出でて奉る。「この橋の切賜らん」と申す。僧正、「かばかりの希有の物はいかでか」とて、「何しにか取らせ給はん。口惜し」とて帰りにけり。すきずきしくあはれなる事どもなり。
★自分の「ツィッター」アカウント上で、この『宇治拾遺物語』の章を紹介してみる→