宇治拾遺物語(巻十 三)116堀河院明暹に笛吹かさせ給ふ事

 これも今は昔、堀河院の御時、奈良の僧どもを召して、大般若の御読経行はれけるに、明暹この中に参る。その時に、主上御笛を遊ばしけるが、やうやうに調子を変へて、吹かせ給ひけるに、明暹、調子ごとに、声違へず上げければ、主上怪しみ給ひて、この僧を召しければ、明暹ひざまづきて庭に候ふ。仰せによりて、上りて簀子に候ふに、「笛や吹く」と問はせおはしませければ、「かたのごとく仕り候ふ」と申しければ、「さればこそ」とて、御笛賜びて吹かせられけるに、万歳楽をえもいはず吹きたりければ、御感ありて、やがてその笛を賜びてけり。件の笛伝はりて、今八幡別当幸清がもとにありとか。《件笛幸精進上当今建保三年也》
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