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御垣守衛士のたく火の
  夜は燃え
    昼は消えつつ物をこそ思へ

Imperial guards burn fire in Palace
Blazing by night, invisible by day.
As stealthy in the day is my love for you,
Burns up my heart at solitary nights,
Leaving me alone in silently yearning days.

『小倉百人一首』049
みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ
 ひるはきえつつ ものをこそおもへ
大中臣能宣(おほなかとみのよしのぶ)
aka.大中臣能宣朝臣(おほなかとみのよしのぶあそん)
男性(921-991)
『詞花集』恋上・二二五
の身辺をお守りする衛兵くかがり火は、
夜は激しく燃え盛り、昼間はひっそり消えている、
でしょう?・・・あれと同じなんです、私の恋情も。
一人過ごす夜には狂おしいまでにあなたを想い、
明けてはただもう抜け殻のように
消沈した心を抱えて日中を過ごす
・・・それほど強く、を焼き尽くすほどに、
あなたをおいしているのです。
【文法・修辞法】序詞+係り結び
...modern Japanese/English part: Copyright(C) fusau.com 2009
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品詞分解
みかきもり【御垣守】<名>
ゑじ【衛士】<名>
の【の】<格助>
たく【焚く】<他カ四>連体形
ひ【火】<名>
の【の】<格助>
よる【夜】<名>
は【は】<係助>
もえ【燃え】<自ヤ下二>連用形
ひる【昼】<名>
は【は】<係助>
きえ【消え】<自ヤ下二>連用形
つつ【つつ】<接助>
もの【物】<名>
を【を】<格助>
こそ【こそ】<係助>
おもへ【思へ】<他ハ四>已然形・・・「こそ」との係り結び



修辞法
序詞
「みかきもりゑじのたくひの」は「よるはもえひるはきえつつ」を導く
解題
 『後撰集』(950年代成立)の編者「梨壺の五人」の一人として知られる大中臣能宣の「序詞」歌(彼以外の作品である、とする説もある)。
 この歌に於ける「序詞」は初句・第二句「御垣守衛士のたく火の」で、これが導く第三・四句「夜は燃え昼は消えつつ」が主意部となる。が、末尾の「つつ」が付帯状況を表わす接続助詞である以上、この第三・四句「夜は燃え昼は消えつつ」は結句「物をこそ思へ」と同時進行で解釈せねば意味が完結しない。そうなるとこの「夜は"燃え"」/「昼は"消え"」の主語は、「物をこそ思へ」の主語と同一人物="詠み手自身"ということになる;が、同時にまた、この部分を導出する「序詞」の「御垣守衛士のたく火」もやはり、この"燃え/消え"の主語である。こうして、「御垣守衛士のたく火」と「詠み手」とが、"燃え/消え"を共有する構造なのだが、前者の"燃え/消え"は物理的現象であるのに対し、後者のそれは心理的な"燃え/消え"である。かくて、「叙景」と「叙情」が、夜の真っ暗闇を赤く照らす炎の視覚的イメージの中で、鮮やかに浮かび上がり、混じり合う・・・『小倉百人一首』撰者藤原定家が最も好みとするタイプの「映像的序詞歌」である。
 天皇の居所を夜通し警護する「御垣守衛士」の「く火」という、いかにも勅撰和歌集撰者らしい宮中のイメージで歌を起こし(・・・前述の「他者の作品を能宣宛がった」説が真実だとすれば、宛がった理由はまさにここにあろう)、その煌々たる松明の火が「夜は燃え」るように、自分の恋心(=物思ひ・・・和歌の「物を思ふ」の殆どは「恋心」であり、恋愛感情以外の「懸念」は少数派)もまた(愛する人と逢えない)夜には猛烈に燃え上がる・・・が、その反動のように「昼は消え」てしまう。ここで「消え」るのは、狂おしいまでの恋情のみではないであろう・・・愛しい人に逢えずに終わった夜の傷心が尾を引いて、日中の生活から活力を奪い、「消え入るように生きている」の感じまで、この歌には漂っている。
 「心よりカラダ」の現代人にかかると、「夜は燃え」の部分は「焼き肉モリモリ食べてスタミナ付けた後でのベッドの上での運動会に於けるアドレナリン全開グリコーゲン燃焼筋肉躍動発汗その他液体分泌大量発情過多」・・・で、燃え過ぎた反動が出て翌日の「昼は消え=日中の仕事・勉強にはまるで身が入らない」、という噴飯ものの「お里が知れる」解釈に結び付くかもしれない・・・が、そうした「肉体の饗宴(or共演or狂宴)」であれば「物をこそ思へ」なる心理描写は、ない:「君(or人)をこそ思へ」である。「物思ひ」は、肉体関係を排除しないが、心的高揚を押し退けて主役の座を肉体的欲情に明け渡してしまう言い回しではないのだ・・・このあたりの心理・真理に手が届かぬ御仁は(悪いことは言わない)人前では歌の能書きなどひけらかさぬほうが身のためである。文芸センス皆無では平安期の貴公子に恋のチャンスは乏しいが、現代の男子なら、カネとお笑いのセンス程度の代替物で「肉体の"きょう、ええン?"(えぇやろぅ)」と女に迫る芸当もアリなのだから。
 恐らくは、生身の誰かへの恋心から生まれた歌ではなく、イメージ先行で作られた作品ではあろうが、そのイメージがここまで鮮烈だと、作り物のチャラチャラした感じは薄らいで、「恋歌」としての真実味のなさもまるで気にならなくなる。
 作者の姓「大中臣」は、元をただせば"藤原"につながる。「大化の改新」(645)で中大兄皇子天智天皇:38代)を助けた功により"藤原"の姓を賜わったあの藤原氏の開祖「藤原鎌足」(614-669)が、元々名乗っていた姓が「中臣」である。が、"藤原"の姓を名乗ることを許されたのは、鎌足嫡子「藤原不比等」とその子孫のみであり、それ以外の子孫は「中臣」の姓のままであった。一方、不比等がまだ幼くて"藤原"の姓を名乗る必然性がなかった当時は、暫定的な形で、鎌足の養子の中臣意美麻呂が"藤原意美麻呂"を名乗っていた。成長した不比等が"藤原不比等"となると、一旦は"中臣意美麻呂"に戻ったが、その後不比等の後援を受けて彼は"大中臣意美麻呂"を名乗るようになる:中臣家の中でも最も格付けの高い家柄の意で"大"を付けた訳である。
 以後、大中臣家は、神祇伯伊勢祭主世襲するようになる。平安中期以降は神祇伯世襲白川家に移り、大中臣家は伊勢祭主のみを世襲するようになり、江戸時代には家名を"藤波"と改めてその世襲を続けたが、近代以降は華族がこれを継ぐものとなって現代に至っている。
 大中臣能宣の息子の輔親も有名な宮廷歌人であり、その娘(能宣の孫)はあの「史上最高の早詠み歌人」伊勢大輔第61番歌「いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな」作者)である:"伊勢"の名が"伊勢祭主世襲の家"に由来するものであることは言うまでもない。
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