▼page BOTTOM▼
[ 1 ] [ 2 ] [ 3 ] [ 4 ] [ 5 ] [ 6 ] [ 7 ] [ 8 ] [ 9 ] [ 10 ] [ 11 ] [ 12 ] [ 13 ] [ 14 ] [ 15 ] [ 16 ] [ 17 ] [ 18 ] [ 19 ] [ 20 ] [ 21 ] [ 22 ] [ 23 ] [ 24 ] [ 25 ] [ 26 ] [ 27 ] [ 28 ] [ 29 ] [ 30 ] [ 31 ] [ 32 ] [ 33 ] [ 34 ] [ 35 ] [ 36 ] [ 37 ] [ 38 ] [ 39 ] [ 40 ] [ 41 ] [ 42 ] [ 43 ] [ 44 ] [ 45 ] [ 46 ] [ 47 ] [ 48 ] [ 49 ] [ 50 ]
[ 51 ] [ 52 ] [ 53 ] [ 54 ] [ 55 ] [ 56 ] [ 57 ] [ 58 ] [ 59 ] [ 60 ] [ 61 ] [ 62 ] [ 63 ] [ 64 ] [ 65 ] [ 66 ] [ 67 ] [ 68 ] [ 69 ] [ 70 ] [ 71 ] [ 72 ] [ 73 ] [ 74 ] [ 75 ] [ 76 ] [ 77 ] [ 78 ] [ 79 ] [ 80 ] [ 81 ] [ 82 ] [ 83 ] [ 84 ] [ 85 ] [ 86 ] [ 87 ] [ 88 ] [ 89 ] [ 90 ] [ 91 ] [ 92 ] [ 93 ] [ 94 ] [ 95 ] [ 96 ] [ 97 ] [ 98 ] [ 99 ] [ 100 ]
音に聞く高師の浜の
  あだ波は
    かけじや袖の濡れもこそすれ

Waves as vainly high as the name of Takashi's beach,
What sleeves should I put out to wet and cry?
What a fool I'll be to whet your flirting mind!

『小倉百人一首』072
おとにきく たかしのはまの あだなみは
 かけじやそでの ぬれもこそすれ
一宮紀伊(いちのみやのきい)
aka.祐子内親王家紀伊(ゆうしないしんわうけのきい)
女性(歌合せ参加記録あり 1056-1113)
『金葉集』恋下・四六九
むやみと意味もなく高い波が立つと評判の高師の浜
・・・のあだ波のように、
浮気者としてその名も高い
あなたの浮ついた恋のお誘いは、
心にも掛けずに
やり過ごすことにしましょう
・・・なまじ浜辺に近寄ったばかりに、
高波に袖が濡れるのもですし、
気紛れな恋に振り回された挙げ句
失恋の涙に袖を濡らすのも御免ですから。
【文法・修辞法】掛詞+歌枕+係り結び
...modern Japanese/English part: Copyright(C) fusau.com 2009
▲page TOP▲
▼page BOTTOM▼
品詞分解
おと【音】<名>
に【に】<格助>
きく【聞く】<他カ四>連体形
 たかし【】<名>・・・「高師」
 たかし【】<形ク>・・・「高し」
の【の】<格助>
はま【浜】<名>
の【の】<格助>
あだなみ【徒波】<名>
は【は】<係助>
 かけ【】<他カ下二>未然形・・・「(水を)掛け」
 かけ【】<他カ下二>・・・「(気に)懸け」
じ【じ】<助動_打消意志>終止形
や【や】<間投助>
そで【袖】<名>
の【の】<格助>
ぬれ【濡れ】<自ラ下二>連用形
も【も】<係助>
こそ【こそ】<係助>
すれ【すれ】<自サ変>已然形・・・「こそ」との係り結び



修辞法
掛詞
<たかし>
1)「高師」(地名)」
2)(波/浮き名が)「高し」
<かけじ>
1)(波を袖に)「掛けじ」
2)(浮気者に想いを)「懸けじ」
<ぬれもこそすれ>
1)(波しぶきに袖が)「濡れるといけないから」
2)(失恋の涙で袖が)「濡れるのはいやだから」
歌枕
高師の浜和泉の国)
解題
 時は、平安中期の堀河帝時代。男性がまず女性に恋歌を贈り、女性が男性に返歌を詠み返す、という中古貴人の恋愛模様を、畳の上の歌合せの席でヴァーチャルに再現してみよう、という趣向の「艶書合」などという何とも色めいた催しが、天皇ご自身の主催により行なわれていた、実に雅びな時代でありました。
 先行する藤原俊忠が、まずこう詠み掛けます:
 人知れぬ思ひありその浦風のよるこそ言はまほしけれ
 心(・・・「うら」と読めば「浦」と同音で、そのよしみから間接的に「波」へとつながる「縁語」)の底に人知れず貴女への思いを寄せてきたこの私ですが、今日という日の夜(・・・よる・・・を通して「寄る」経由で「浦・波」へとつながる「縁語」)こそは、貴女にその思いを伝えたく思います。そして、浜辺に波が寄るように、貴女に寄り添ってこの夜を過ごしたく思います。(ここでの「言ふ」は単に「言う」ではなく「求愛する」の意)(「ありそ」は「(思ひ)在り(そ)」/「荒磯」の掛詞)(「いは:言は」は「岩」を介して「浦」につながる「縁語」)
 技巧をまぶしてスラスラと詠み掛ける流麗な歌の響きのその裏に、こういう恋の小道具を幾つも駆使して、色んな女に寄せる浮気な波を、さぞやしばしば吹き送る浦風サンなんでしょうね、この男は・・・というようななる匂いを、感じません?
 これを受けて、我ら女性陣代表、祐子内親王家紀伊(別名、一宮紀伊)チャン、やはり不実の波動を感じたのでしょう、小粋な返歌で男をソデにしてみせます:
 「高師の浜」って、有名なんですってね、「無意味にやたらと波が立つ」って。・・・わたし、いやだわ、そんな浜辺に近寄るのは。だって、意味もなく立つ波を引っ掛けられて、着物の袖が濡れたら困るでしょ。・・・どうせ浮気な恋の誘いに引っ掛かった末に、涙で袖を濡らすのも、ごめんだわ。
 勝負あった!一本!きいちゃんの勝ち!って感じ。
 いいなあ、こういうの。・・・女なら、バシッと決めてみたいと思いません?・・・カッコ(だけ)つけて女に言い寄って来て、これだけキメればバッチリ、もうオレのもの、みたいな自己陶酔でこっちを既にもうおいてけぼりにして自分だけ先走ってるのにも気付かないで、「さぁ、早く、おいで」みたいな顔してるイヤなオトコのニヤけた横っ面を、言葉の平手打ちでピシャーんってはねつける、優雅なる護身術としてのこの袖歌・・・うーん、うっとり。・・・え、自己陶酔?・・・いいでしょ、女だもの。こういう陶酔は恋の香水、すっぴん強要されるおぼえは、ありません・・・でも男子は、香水だの陶酔だのに走って素顔が見えないヒトじゃ、ダメ。ムードを出してくれるのは嬉しいけど、盛り上げたムードに比して、肝心の中身のなさが目立つようじゃ、まったく逆効果。外見でも言葉でも、御化粧は女の特権なんだから、男の人はその使い方を間違えてもらっちゃ、ムード台無しなんだから・・・。
 なんか、この歌といい、周防内侍の「春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ」(67番歌・・・相手の男は藤原忠家さん)といい、小式部内侍の「大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立」(60番歌・・・相手の男は藤原定頼さん)といい、平安中期って、頭のいいイイ女には、とってもいい時代だったような気がしますねー。周りには、高貴でそこそこ魅力的な男性が沢山いて、出会いや誘惑も山ほどあって、それなりに持て囃されて、アソばれちゃう危険もあるけど、いざという時にはこういう歌できれいにキメちゃえば、男性からの冷やかしも腕枕徒波も、お行儀よくすごすごと退散して、上品な笑い話になっちゃう。・・・平安な時代には、やっぱ、女こそ主役!そんな気がする優雅な歌でした。
[ 1 ] [ 2 ] [ 3 ] [ 4 ] [ 5 ] [ 6 ] [ 7 ] [ 8 ] [ 9 ] [ 10 ] [ 11 ] [ 12 ] [ 13 ] [ 14 ] [ 15 ] [ 16 ] [ 17 ] [ 18 ] [ 19 ] [ 20 ] [ 21 ] [ 22 ] [ 23 ] [ 24 ] [ 25 ] [ 26 ] [ 27 ] [ 28 ] [ 29 ] [ 30 ] [ 31 ] [ 32 ] [ 33 ] [ 34 ] [ 35 ] [ 36 ] [ 37 ] [ 38 ] [ 39 ] [ 40 ] [ 41 ] [ 42 ] [ 43 ] [ 44 ] [ 45 ] [ 46 ] [ 47 ] [ 48 ] [ 49 ] [ 50 ]
[ 51 ] [ 52 ] [ 53 ] [ 54 ] [ 55 ] [ 56 ] [ 57 ] [ 58 ] [ 59 ] [ 60 ] [ 61 ] [ 62 ] [ 63 ] [ 64 ] [ 65 ] [ 66 ] [ 67 ] [ 68 ] [ 69 ] [ 70 ] [ 71 ] [ 72 ] [ 73 ] [ 74 ] [ 75 ] [ 76 ] [ 77 ] [ 78 ] [ 79 ] [ 80 ] [ 81 ] [ 82 ] [ 83 ] [ 84 ] [ 85 ] [ 86 ] [ 87 ] [ 88 ] [ 89 ] [ 90 ] [ 91 ] [ 92 ] [ 93 ] [ 94 ] [ 95 ] [ 96 ] [ 97 ] [ 98 ] [ 99 ] [ 100 ]
▲page TOP▲


↓ サイト主 之人冗悟(Jaugo Noto)の「紙の本」 ↓ (from ZUBARAIE LLC.) ...available ONLY ON amazon.com
。。。How to buy from amazon.com (U.S.)?

(・・・クリックして「PDF見本」御覧あれ・・・)
日本の勅撰和歌集「八代集」約9500首の中から厳選した200の秀歌を現代日本語/英語で解説、平安調短歌の代表作を通して日本古来の季節感と情緒を世界に伝えるすべての文化人必須の古典文芸教養本(見本版: 3.4MB/54p)

(穴埋め形式による文法理解度確認テスト等)暗記促進のためのスグレものの工夫満載で千年昔の平安時代の日本語(+和歌)の完璧な理解へと受験生/日本文学愛好家を導く、文法+和歌の包括的ガイドブック。
(見本版=4.4MB/84p)

日本の大学受験生/古典文学愛好家にとって必須の、日本の古文の理解/鑑賞に欠かせない最重要平安古語1500の包括的ガイドブック。
(見本版=4.4MB/45p)

「古文単語1500」と「古文・和歌」のマスタリング・ウェポン本の生きた例文集として、古語(1500)/助動詞(37)/助詞(77)を織り込んで創られた歌物語22編(英文/現代日本語/千年昔の平安時代の和語の対訳形式)。
(見本版=5.8MB/56p)


旧来の典型的日本人の問題山積の方法論や学習態度からのコペルニクス的転換をもたらすべく、日本人英語初学者/再挑戦者のために(英語で)書かれた英語学習指南書(全編日本語訳つき)
(見本版=4.4MB/41p)

英文解釈を「可視化」する古今未曾有の新方法論:その目で見なけりゃ信じられぬ&見たら必ず欲しくなる、英語の触覚的理解のための「目で見てわかる」お助け本。(姉妹書「でんぐリングリッシュ:英和対訳版」全英文の意味構造をわかりやすく「図解」してあります)
(見本版=456kb/36p)



click to buy from AMAZON.COM